東大寺・お水取りの要素を加味した舞踊劇 尾上松緑が13年ぶりに 小玉祥子
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舞台 團菊祭五月大歌舞伎 達陀
天平勝宝4(752)年の大仏開眼以来、奈良・東大寺二月堂で途絶えることなく受け継がれてきた「修二会(しゅにえ)」(お水取り)のエッセンスを巧みに取り込んだ舞踊劇「達陀(だったん)」(萩原雪夫作)が、歌舞伎座の「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部で上演されている。要となる僧集慶(じゅうけい)は尾上松緑。本興行では2010年12月の日生劇場公演以来の上演となる。
松緑の祖父である二世松緑の振り付けと集慶で1967年2月に歌舞伎座で初演された。
松明(たいまつ)を持った童子たちが国土安穏や天下泰平を祈る踊りに続き、練行衆による散華の行法となる。集慶が過去帳を読み上げると、青衣(しょうえ)の女人(にょにん)が現れる。青衣の女人は若き日の集慶が思いを寄せた女性の幻であった。
このくだりは、「青衣女人伝説」に基づく。その概要はこうだ。過去帳を読む集慶の前に青い衣を着た女性が現れ、「なぜ自分の名を読み落としたのか」と口にして消えた。以降、修二会では青衣の女人の名を加えるようになったという。
作者の萩原は「私はこの青衣の女人を集慶の心の幻影として捉えた。即ち修二会も終わりに近づいたお水取りの深夜、荒行に心疲れた僧の心の隙に“煩悩”として現れたのが青衣の女人であり、身にまとえる“青衣”は煩悩を象徴するというように設定して、舞踊劇としてのお水取りに色彩を加えたのである」(04年3月歌舞伎座筋書き)と記した。
青衣の女人は中村梅枝、幻想の集慶は松緑の長男の尾上左近が演じる。
中…
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週刊エコノミスト
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