習政権がロシアの“裏庭”中央アジアに触手 軍事面でも冷える中露関係 金子秀敏
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中国の習近平国家主席が5月18、19日、陝西省西安市で「中国・中央アジアサミット」を開いた。中央アジア5カ国元首を招き、「一帯一路」(シルクロード経済圏)のインフラ建設に5000億円規模の投資を表明した。新型コロナで経済状況が悪化した中国にとっては、捨て身のばらまき外交だ。
秦の始皇帝の宮殿を模した野外施設で、唐の時代の衣装を着た多数の男女が踊るアトラクションが演じられた。唐の最大版図は中央アジアほぼ全域に及んだ。唐風の踊りから、ロシアの「裏庭」でもある中央アジアを勢力圏に入れたい習氏の野望が読み取れる。
旧ソ連から独立後、ロシアの勢力圏に入った中央アジア各国もロシア離れの機運が高まっている。中央アジアと中国を結ぶ天然ガスパイプライン網のうち、ロシアの圧力で進まなかったトルクメニスタン、タジキスタン、キルギス経由で中国に至る「ルートD」への期待が大きくなってきた。
中国にとっても、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン経由の「ルートA、B、C」に「ルートD」が加わると、「シベリアの力」(中露両国を結ぶパイプライン)によるロシア産天然ガスのほぼ倍の供給量を確保できる。この結果、ロシアが提案する「シベリアの力2」(モンゴル経由でシベリア・中国を結ぶパイプライン)の重要性は低下する。
西安サミットは、G7の広島サミットと同時に開かれた。広島にはウクライナのゼレンスキー大統領が乗り込み、ロシアと戦うための武器支援を求めた。プーチン・ロシア大統領は、反ロシアと脱ロシアの二つのサミットに挟み撃ちされた形になった。
西安サミット閉幕の5日後、ロシアのミシュスチン首相が訪中し、習氏と会談した。首相は「ルートD」阻止のため、3月の習・プーチン会談で合意できなかった「シベリアの力2」の着工を求めたが習氏は回答を避けたという。
ミサイル機密漏えいの影
プーチン氏が習氏を警戒するのは、中央…
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週刊エコノミスト
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