中国の金利自由化から約10年 利ざや縮小で業務転換を迫られる銀行 神宮健
中国で商業銀行の利ざやが縮小している。商業銀行全体の預貸利ざやは、2021年末の2.08%から23年3月末は1.74%に低下。純利益の伸び率も22年通年の前年比5.4%増から、23年第1四半期は前年同期比1.3%増に鈍化した。
背景には、景気回復が一進一退の中、貸出金利が低下したことがある。中国政府の「金融が実体経済に貢献する」の掛け声の下、中国人民銀行(中央銀行)の公開市場操作で、政策金利に相当する中期貸し出しファシリティー(MLF)金利は21年末から今年5月までに0.2ポイント低下した。MLF金利にマージンを載せる形で決まるLPR(優良顧客向けに提示する貸出金利)も1年物が3.65%(0.15ポイント低下)、5年以上が4.3%(0.35ポイント低下)となり、各行の貸出金利も全般に低下した。
また、不動産不況を受けて、銀行貸し出し全体が今年5月時点で前年同月比11.1%増える中、利ざやが比較的大きいといわれる不動産開発向け貸し出しと住宅ローンの伸びがそれぞれ同5.9%増、0.3%増と低くなり、貸し出し構成が変化していることもある。
一方、預金金利については、預金集め競争が厳しく預金金利を調整しがたいことが利ざや縮小の一因に挙げられる。ただし、22年9月に主要銀行が預金金利を引き下げたのを皮切りに、一部の中小銀行も引き下げに動いている。
背景には、銀行などの金融機関が、金融・貸出市場の金利に対して自律的な管理をするために13年に組織した「市場金利決定自律メカニズム」がある。同メカニズムに対して、中国人民銀行は22年4月、メンバー行が、10年物国債に代表される債券市場金利と1年物LPRに代表される貸出市場金利を参考に、預金金利水準を合理的に調整するように指導した。つまり、最近の預金金利引き下げもLPR低下の影響を受けている。預金金利の調整や、不動産開発貸し出しが22年後半か…
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週刊エコノミスト
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