地政学やESGなどに惑わぬバフェット氏 シンプルな4原則で株主に利益還元 多田博子
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コンサルタントとの会話で「ジオ・ストラテジー」という造語を耳にした。地政学を踏まえた経営戦略という意味らしい。
ワシントンDCではこれ以外でも、台湾有事を想定した「ウォー(戦争)ゲーム」、多国籍企業が有事に備えるための「デスクトップ(机上)シナリオ」、米中関係の「デカップリング(分断)」や「デリスキング(リスク回避)」など、数多くのレトリック(用語表現)が生み出され、人々の不安をかき立てる。全てを真に受けると、米国に拠点を持つ日本企業としては中国とのビジネスは難しく、ESG(環境、社会、企業統治)開示も完璧に対応しないと機関投資家に見放されるという判断につながりうる。企業が「他人の声」に惑わされず、リスクに備えるには、どうすべきであろうか。
故郷で質素な暮らし
この点で筆者が注目しているのは、著名投資家のウォーレン・バフェット氏である。バフェット氏は、政治信条的にはリベラル派として知られ、オバマ氏やヒラリー・クリントン氏といった民主党大物や中絶権利を擁護する団体を支援するほか、個人資産の大半を盟友ビル・ゲイツ氏の財団などへ寄付している。質素な生活ぶりも有名で、70年前に約3万ドルで購入した故郷ネブラスカ州の住まいに暮らし、報酬は米国で中流の生活が送れるレベルの年間約10万ドル(約1400万円)に設定している。
一方で、ESG重視の機関投資家による環境開示などの提案には猛然と反対している。会長兼CEO(最高経営責任者)を務めるバークシャー・ハサウェイ社が保有するエネルギー関連2社の電力を再生可能エネルギーに転換はするが、保有する金融会社の顧客の二酸化炭素排出量を計測するようなことは絶対にしないという。バークシャー・ハサウェイ社の従業員26人に対し、そのポートフォリオは60社、従業員38万人に上るが、傘下企業に対して無駄な作業は一切させないというスタンスだ。保有していた世界最大…
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週刊エコノミスト
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