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2022年度エコノミスト賞授賞式 岡室氏と西村氏 研究開発支援を実証分析(編集部)
第63回(2022年度)エコノミスト賞(毎日新聞社、毎日新聞出版主催、千葉商科大学協賛)の授賞式が6月5日、東京都千代田区の学士会館で開かれた。受賞作『研究開発支援の経済学─エビデンスに基づく政策立案に向けて』(有斐閣)の著者の岡室博之・一橋大学教授と西村淳一・学習院大学教授に、毎日新聞出版の小島明日奈社長から賞状と記念品、協賛の千葉商科大学の内田茂男理事長から賞金100万円の目録が贈られた。
岡室氏と西村氏は、一橋大学経済学部以来の師弟関係。西村氏が一橋大学大学院生時代の08年度に、経済産業省の産学官連携の新産業育成事業「産業クラスター計画」について岡室氏に研究を提案して始めた約15年間の成果が受賞作となった。
授賞式で岡室氏は、初対面の西村氏がニット帽にピアス姿だったことに戸惑いつつも、すぐにその優秀さに気づいた。「とにかく仕事が早く、フットワークが軽い」。入手が難しい研究開発支援に関するデータを経済産業省から入手し、緻密に分析する姿勢に惚(ほ)れ込んだ。「受賞作の大半は西村先生の功績」と、愛弟子を称えた。
師匠から最大級の評価をもらった西村氏は「厳しくも温かく指導していただいたおかげで今回、受賞できた」と、岡室氏はじめ大学院時代の恩師である岡田羊祐・成城大学社会イノベーション学部教授らに感謝の言葉を述べた。
その岡田氏は、「国立大学の法人化が始まったばかりのころで、まだ牧歌的で、研究を少数で切磋琢磨(せっさたくま)できる時代だった」と、当時を振り返り、医薬産業のデータ分析に取り組むなど研究者への道を順調に進む西村氏を見守った。岡田氏はある時「研究室に大きなベッドがあることに気づいた」と打ち明ける。一見、スマートに仕事をこなしているものの、昼夜問わず研究に打ち込む愛弟子の姿を想像した。
岡室氏と同僚で、かつ西村氏の恩師でもある長岡貞男・経済産業研究所ファカルティフェローは「受賞作のテーマとなった研究開発支援はあまり注目されないテーマだが、非常に重要な分野。そうした分野において、受賞作は公的データやサーベイ、関係者へのインタビューを積み重ねた研究成果」と語った。
選考委員長の井堀利宏・政策研究大学院大学名誉教授は「データ集めが大変な日本で、アンケートや経済産業省のデータを基に研究開発支援という分野を実証的に分析されている」としたうえで、「導入部分や結論で、一般の読者にも読みやすく、わかりやすく書かれている」と、選考委員全員一致での受賞だったと講評した。
毎日新聞社の松木健社長は授賞式冒頭で「『週刊エコノミスト』は今年、創刊100年を迎えた。これからも、『週刊エコノミスト』と毎日新聞が両輪となって、皆さまから評価されるようなコンテンツ作りに努めてまいりたい」と、あいさつした。
エコノミスト賞は、1960年に創設。日本や世界について実証的・理論分析的に優れた作品に授与される。
(編集部)
週刊エコノミスト2023年6月27日・7月4日合併号掲載
FOCUS 第63回(2022年度)エコノミスト賞 岡室博之氏、西村淳一氏を表彰 研究開発支援を実証分析=編集部