到来“高コスト時代” 企業と家計の共倒れリスクも(編集部)
2022年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く、CPI)は前年度比3.0%上昇し、1981年度以来、40年ぶりの上げ幅となった。
81年当時は第2次オイルショックに伴うインフレ(物価上昇)だった。第1次オイルショックとともに、店頭からトイレットペーパーが消えた騒動を中高年は思い出すかもしれないが、若者にとっては今回が「初のインフレ体験」。日本は90年代後半から長期間にわたって、「物価も賃金も横ばい」が続く慢性デフレに覆われていた。今回のインフレは脱デフレを意味するのか。元の「横ばい状態」に戻るのか──。日本経済は分岐点に立っている。
円安と密接にリンク
今回のインフレは、足元で進む円安と密接にリンクしている。例えば、原料を1000円分輸入する場合、1ドル=100円なら支払いは10ドルで済むが、円安が進んで1ドル=140円になると、1400円支払わなければならない。つまり、円安になると同じモノでもたくさんのお金が必要になる。
6月26日のドル・円相場は一時、1ドル=143円台まで円安が進んだ。松野博一官房長官は記者会見で「政府としては為替市場の動向を高い緊張感をもって注視し、行き過ぎた動きに対しては、適切に対応する考えだ」と為替介入を示唆した。
ガソリンの店頭価格の動きもインフレを加速させる可能性がある。政府は6月以降、石油元売りに支給している補助金を段階的に縮小し、9月末で終了する予定。原油相場によっては店頭価格の値上がりにつながる。ガソリン価格の上昇は物流システムだけでなく、マイカーの使用が多い地方の経済にとっても打撃になる。
「攻めの賃上げ」が試金石
インフレは一時的なものか、構造的なものなのか──。日本総研客員研究員で、法政大学大学院の山田久教授は、①「世界の工場」だった中国の位置付けが変わる一方、米中の対立が激化し、経済安全保障の枠組みが一層重視される「戦略的グローバリゼーション」が進展、②脱炭素の流れを受けた「エネルギー制約」、③国内外に及ぶ労働力不足──の三つの側面が資源供給を制約するため、これまでのデフレ時代は終わり「高コスト・インフレ時代」が到来するとみている。
山田教授は「日本でも2%前後のインフレ率が続く可能性もある。国内でも物価上昇と生産性向上に見合った『攻めの賃上げ』を進めなければ、企業と家計が共倒れするリスクもある」と指摘する。
(中西拓司・編集部)
週刊エコノミスト2023年7月11日号掲載
円安インフレ 「高コスト時代」の到来 企業と家計の共倒れリスク=中西拓司