医療分野の性差研究に根強い男女格差の是正求めるキャンペーン 小林知代
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米国において、連邦政府の資金を使った臨床研究に女性やマイノリティーを参加者として含めることを義務づけた法律「NIH(米国立衛生研究所)再活性化法」が1993年に制定されてから、今年で30年となる。病気における男女差について研究する「性差研究」では、男女格差が今なお存在しており、これを是正しようというキャンペーンが展開されている。
米国では、この法律が制定される前は、ほとんどの臨床試験や診断、医療機器開発が男性を対象に行われ、法律制定後も「体重70キロの白人男性」が研究基準となっていた。女性の特徴的な疾患については十分に研究されておらず、予算・リソース(資源)、メディアの関心も限られている。
例えば、心血管疾患は米国における女性の死亡原因の第1位だが、臨床試験参加者のうち女性は3分の1にすぎない。アルツハイマー患者の4分の3が女性なのに対し、神経科学研究において使用される動物のメスは全体の3分の1にとどまっている。また、うつ病に罹患(りかん)する女性は男性の2倍であるが、研究用のメスの動物の使用率は全体の45%に満たない。
「30年分を3年で」運動
この問題に対し、女性の健康研究の向上に取り組む団体「ウーマンズ・ヘルス・アクセス・マターズ(WHAM)」は、状況の改善が遅いことを問題視し、30年分の進歩を3年間で実現するべきとする「スリー・ノット・サーティー(30年ではなく3年で)」運動を始めた。この運動には、2020年の米大統領選で民主党候補の指名を争い、注目されたエイミー・クロブシャー上院議員のほか、アフリカ系、アジア系の女性議員たちが賛同している。
運動で顕著なのは、データによるアピールである。米国における労働力の50%、資産の60%、消費購買の決定権の85%、健康医療に関する決定権の80%を握っているという女性の健康が改善されれば医療費の大幅削減につながることを主張して…
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週刊エコノミスト
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