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経済・企業

ホテル、旅館の9割が人手不足ーー新型コロナ「5類」指定で訪日需要急回復、全国宿泊施設のアンケート調査

新型コロナの「5類」指定で、訪日観光客も急増している(奈良の東大寺を訪れる外国人観光客) Bloomberg
新型コロナの「5類」指定で、訪日観光客も急増している(奈良の東大寺を訪れる外国人観光客) Bloomberg

 新型コロナウイルスの感染症の分類が季節性インフルエンザと同等の感染リスクが低い「5類」に変更されたことを受け、観光需要が急回復する中、ホテルなど宿泊施設の人手不足がさらに深刻になっている。ホテルや旅館など宿泊施設への人材派遣等を手掛けるダイブ(東京・新宿)と全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部(東京・千代田)が5月に実施した調査によると、全国のホテル・旅館の約9割が「人手不足を感じている」と回答した。アフターコロナで人の移動が活発になり、訪日外国人数も回復。宿泊分野の人材市場の需給が一段とひっ迫しつつあり、外国人の採用に積極的な企業も多いようだ。

宿泊業界の人手不足は一段と深刻に

 調査はダイブと全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が2023年5月15日から26日に実施し、有効回答数は318件だった。

 アンケートでは「現在、人手不足を感じているか」との質問に対して「はい」との回答が86.8%に達した。「いいえ」との回答は13.2%にとどまった。総務省の労働力調査によると、「宿泊業、飲食サービス業」の就業者数はコロナ禍前の2019年に比べて大幅に減少している。一方、アフターコロナ時代を迎えて宿泊者数が増えるとみられ、宿泊業界の人手不足はさらに深刻になるとみられる。

宿泊施設の人手不足は深刻化している (出所)ダイブ、全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部
宿泊施設の人手不足は深刻化している (出所)ダイブ、全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部

訪日外国人の予約が「増加した」76%

「2023年以降、訪日外国人の予約が増加したか」との質問に対しては「増加した」が76.1%に達した。「増加していない」は23.9%にとどまった。「訪日外国人のうち、最も多い国・地域を3つあげてほしい」との質問への回答は「韓国、台湾、香港」が8.8%と最多だった。次に多かったのは「韓国、中国、台湾」で7.9%だった。

政府の観光支援策「全国旅行支援」の効果については「とても効果を感じた」が61%、「やや効果を感じた」も26.1%に達した。合わせると、効果を感じている宿泊施設は9割近くにのぼるということになる。一方で「効果を感じなかった」は0.9%、「あまり効果を感じなかった」は2.2%にすぎなかった。

「全国旅行支援」の効果は大きい (出所)ダイブ、全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部
「全国旅行支援」の効果は大きい (出所)ダイブ、全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部

宿泊業界は外国人の採用に積極的

 人手不足を背景に、宿泊業界では外国人を採用する動きも強まっているようだ。「2023年1月以降、外国人の採用をしたか」との質問に対して「採用した」と回答した人は45.9%にのぼり、最多だった。「時期を決めていないが採用予定」も14.8%、「3カ月から半年以内に採用予定」は4.4%。「1年以内に採用予定」は3.5%だった。全体の約7割が外国人の採用に対して前向き、またはすでに採用しているという結果となった。

 一方で「採用はしない」は28.6%にとどまった。大半の宿泊関連の企業では、外国人をスタッフとして迎え入れることを検討していることがわかった。海外との文化や商慣習、職場のマナーなどの違いから、日本では多くの業界で外国人の採用には消極的とされる。しかし、宿泊業界については例外的に多くの企業が外国人の採用に積極的だとみられる。

(日高広太郎・ジャーナリスト)

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