青果の新歌舞伎 侠客2人が交わす圧巻の長台詞 小玉祥子
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舞台 八月納涼歌舞伎 新門辰五郎
幕末の京都を舞台にした真山青果作の新歌舞伎「新門辰五郎」(織田紘二演出)が歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」第二部に登場する。歌舞伎座での上演は1976年以来。辰五郎を松本幸四郎、小鉄を中村勘九郎が初役で務める。
江戸の町火消し、浅草十番「を」組の頭・辰五郎は徳川(一橋)慶喜の信頼が厚く、十四代将軍徳川家茂の上洛では慶喜と共に一門を率いて同行した。だが、それまで京を守ってきた自負のある京都守護職の会津宰相・松平容保(かたもり)に仕える中間(ちゅうげん)(従者)たちは、それを快く思わず、若い者同士が一触即発の状態となり、辰五郎と会津の部屋頭小鉄が抑える。
辰五郎と親しい絵馬屋の勇五郎と母お六に連れられて京に来た辰五郎の子丑之助は会津方に捕らえられる。辰五郎は丑之助を返す代わりに、かくまっている水戸浪士を引き渡すように言われるが拒絶。そこへ小鉄が丑之助を連れて現れる。二人は互いの思いをぶつけ合う。
青果は「元禄忠臣蔵」「江戸城総攻(そうぜめ)」など現在でも上演されることの多い歌舞伎作品を多く生み出している。綿密な調査に基づいて史実に即した作劇を得意とし、登場人物の台詞(せりふ)は格調高く胸をうつ。本作でも辰五郎と小鉄が交わす長台詞が聞きどころになる。
登場人物も魅力的だ。辰五郎と小鉄の間で暗躍する中村獅童の演じる無頼の公家・山井実久(やまのいさねひさ)、中村七之助の芸妓八重菊、市川染五郎の攘夷(じょうい)派の水戸浪士・都筑三之助、中村歌六の侠気のある絵馬屋…
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週刊エコノミスト
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