日銀“利上げ容認”の次は? 専門家2人が予想する(編集部)
「次の修正はいつ、どういう形で実施されるのか」──。動くか否かで予想が割れた7月27・28日の政策決定会合で、修正に動いた日銀の「次の一手」に早くも市場関係者の関心が集まっている。
日銀は7月28日、長短金利操作(YCC)を柔軟化し、10年国債利回り(長期金利)の上限を0.5%から1%に引き上げた。金利動向を一定程度市場に委ね、長期金利の上昇を容認する構えに転換した。8月初旬には一時、0.655%と約10年ぶりの高水準にまで上昇。中旬以降も0.6%台で推移している(図1)。
気になる為替市場の動きは、日銀のYCC修正直後は、1ドル=138円台へと円高に振れたが、その後、145円台へと円安方向に転じた(図2)。
日銀のYCC修正で、長期金利の上昇を一定程度、容認することから実質金利の上昇が円買い要因になると思われたが、「本当の利上げに相当するマイナス金利の解除について日銀の正副総裁が全面的に否定したことから、金融市場は円売りの安心感が醸成された」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフ・マーケットエコノミスト)。
消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)の上昇率(前年同月比)は2022年4月以来、16カ月連続で日銀が目標とする2%を上回っている(図3)。しかし、日銀は7月、23年度のコアCPI上昇率を2.5%に上昇修正したものの(4月時点は1.8%)、24年度は1.9%(同2.0%)、25年度は1.6%(同1.6%)と2%を下回ると予想。マイナス金利解除は、まだ時期尚早という姿勢を崩していない。
だが、米国でも「物価上昇は一時的」と米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が見誤り、その後急激な利上げに追い込まれた。日本は大丈夫か。
注目が集まる日銀の次の一手は──。2人の専門家に予想してもらった。
(編集部)
岩下真理・大和証券チーフマーケットエコノミストが考える一手「長期金利の誘導目標を0.25%に」>>記事はこちら
山川哲史・バークレイズ証券チーフエコノミストが考える一手「10月会合でYCCから時間軸政策へ」>>記事はこちら
週刊エコノミスト2023年9月5日号掲載
日銀 次の一手=編集部