“外資離れ”阻止へ中国政府が投資マインド刺激を指示 岸田英明
「(我が国の)外資利用の状況は基本的に安定している」。中国政府が7月中旬に開いた記者会見での商務部幹部の言葉だ。2023年1~6月に外資が中国で新規に設立した企業数は前年同期比35.7%増の2.4万社。総投資額は同2.7%減の7036億元(約14兆円)だった。
一方、国家外貨管理局が8月4日に発表した国際収支統計は「安定」に程遠い。1~6月のネットの対内直接投資(海外から中国国内への投資)は254億ドル(前年同期比約8割減)。4~6月では49億ドル(同約9割減)だ。この結果、1~6月の中国の直接投資は634億ドルの純流出で、対内直接投資が、対外直接投資(中国から海外への投資)を大きく下回った。前年同期は749億ドルの純流入だ。
両当局の統計を合わせて考えると、6月までの外資の新規対中投資はやや弱含むも堅調の一方、業績悪化などによる既存事業の撤退やリスクオフによる資金引き揚げが増えているようだ。特に増えているのは後者とみられ、この場合のリスクとは、中国の景気減退や米中摩擦の激化、米中金利差の拡大や人民元安の進展などだ。
「外資離れ」が広がれば、雇用の悪化やイノベーションへの悪影響は避けられない。共産党指導部が危機感を示すように、23年は「外資誘致の強化」を重点任務の一つに置き、関連活動に力を入れてきた。商務部などは7月下旬、北京で中国日本商会や中国米国商会の関係者を集めて政策説明会を実施。「政策の透明性を高めるべく」(商務部)、外資が関心を寄せる反スパイ法や輸出管理、越境データ移動について説明と意見交換をした。8月中旬には国務院が「外資投資環境の更なる最適化と誘致努力強化に関する意…
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週刊エコノミスト
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