経済・企業

ITエンジニアの最多希望年収は「1000万円以上」(編集部)

 物価高騰や人材不足などを背景に、ITエンジニアが大幅な賃上げを望んでいることが、アンケート調査から明らかになった。(編集部)

アンケート調査で200人から回答

 国内の人材不足や物価高などを受けて、IT(情報通信)人材が希望する賃金水準が大きく跳ね上がっている。IT事業や海外人材紹介を手掛ける全研本社が日本企業のITエンジニアを対象に実施したアンケート調査によると、希望する給与水準は「年収1000万円以上」との回答が最も多かった。専門知識や技術が必要とされるITエンジニアは他の職種に比べ給与面で一定の優遇を受けているが、「現在の給与水準に満足している」との回答は3割にすぎなかった。経済産業省は2030年にIT人材が最大79万人不足すると試算しており、賃上げ圧力がさらに強まる可能性もあり、採用する企業側を悩ませそうだ。

 調査は全国のITエンジニアを対象に7月28~30日に実施し、200人から回答を得た。

現在の年収に45%不満

 アンケートで現在の年収を聞いたところ、最も多かったのは「500万円以上600万円未満」の22%。「400万円以上500万円未満」が16%、「700万円以上800万円未満」が14.5%で続いた。

「現在の給与水準に満足しているか」と質問したところ、「はい」と答えたITエンジニアは31.5%にとどまり、「いいえ」(44.5%)を大幅に下回った。「どちらともいえない」と答えた人の比率は24%だった(図1)。

 それではITエンジニアはどの程度の年収を望んでいるのか。アンケートで「希望する年収」を聞いたところ、「1000万円以上」との回答が28.5%を占め、最も多かった。「600万円以上700万円未満」「700万円以上800万円未満」(それぞれ18%)が続いた。「600万円以上」との回答は、合計で約8割に達した(図2)。

「賃上げを希望しているか」との質問に「はい」と答えた人は78.5%に達した。「希望する賃上げ率」で最も多かったのは「10%以上」で43.9%を占めた。続いたのは「4%以上6%未満」で19.1%だった。「8%以上10%未満」との回答も11.5%に上った(図3)。

物価上昇が賃上げ理由に

「賃上げを希望する理由」について聞いたところ、最も多かった回答は「物価高騰に対応するため」で49%だった(複数回答)。2番目に多かったのは「仕事内容と賃金が見合っていないため」で44.6%。「労働時間と賃金が見合っていないため」も27.4%、「同業他社に比べ賃金が安いと感じるため」は18.5%の人が挙げた(図4)。「自らの仕事が正当に評価されていない」と感じるITエンジニアが多くいるとみられる。

 ただ、賃上げの実態とはズレがあるようだ。「1年前と比べて年収の変化があったか」については「変わらない」との答えが59.5%と過半数を占めた。「下がった」も7%あり、「上がった」は33.5%にとどまった。23年の春季労使交渉(春闘)での賃上げ率は約30年ぶりの高水準となったが、今回のアンケートでは年収が増えた人は少数派だった。

強まる現場の人材不足

 一方で現場の人手不足は深刻さを増している。「IT人材の不足を実感しているか」との質問に対して「はい」との回答が64%を占め、「いいえ」の16%を大幅に上回った。

「人手不足を感じる理由」については「必要なスキルを持っている人が社内で見当たらないから」が52.3%でトップ(複数回答)。「IT人材が採用できないから」(35.9%)、「IT人材の離職数が多いから」(32%)がそれに続いた。労働市場の需給バランスが崩れていることがうかがえる。「社員をIT人材に育成することが難しいから」「土日出勤や残業が多いなど仕事が忙しいから」との回答も2割を超えた(図5)。

「外国人のIT人材と一緒に働いたことがあるか」との質問に対して「ある」との回答は55.5%と過半数に達した。「外国人のIT人材と一緒に働くことに不安があるか」との質問に対しては「ない」との回答が53%と「ある」の47%を上回った。

「不安がある」と答えた人の理由では「相手が日本語を話せないこと」が62.8%でトップ(複数回答)。「自分が英語を話せないこと」が54.3%で2番目だった。「ビジネスマナーや暗黙の了解への理解」「スキルがマッチするかわからない」との回答も2割以上を占めた。

(編集部)


週刊エコノミスト2023年9月12日号掲載

最多希望年収は「1000万円以上」 ITエンジニアの賃上げ圧力高まる=編集部

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