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投資・運用 投信道場~新NISAで始める

新NISA対象ファンド厳選40本はこれだ まずは“全世界株”で分散投資 篠田尚子

「新NISA(少額投資非課税制度)」の制度開始までいよいよ4カ月を切り、同制度で保有できる投資信託の公表も始まった。新NISAの制度概要について解説するとともに、現時点で公表されている対象ファンドの中から40本をピックアップし、その活用方法についても見ていきたい。

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 現行制度の改良版として生まれ変わる「新NISA」は、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の二つの非課税枠で構成される(表1)。それぞれの特徴は、現行のつみたてNISAと一般NISAをイメージすると分かりやすい。

 長期資産形成を想定した「つみたて投資枠」は、その名の通り、買い付け方法が積み立てに限定され、対象商品も、金融庁が定める基準を満たした「長期」「積み立て」「分散」投資に向いた投資信託に限定されている。これに対し、「成長投資枠」は、買い付け方法が積み立てに限定されず、一括投資も選択・併用できる。また商品は、アクティブ型を含む幅広い投資信託に加えて、株式も対象となっている。「成長投資枠」よりも「自由投資枠」といった方がしっくりくるかもしれない。今回、新NISAでは、長期資産形成に適さないという理由で、投資信託のうち、毎月分配型やレバレッジ型の一部が対象から外れるが、おおむね現行制度を踏襲しているといってもよい。なお、この二つの枠は同時に利用することが可能だ。

 一方、大きく変わるのが、投資可能枠(非課税枠)と非課税期間である。新NISAの年間非課税枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円となり、合計で年360万円まで上限額が引き上がる。1人当たりの最大利用可能額は1800万円(うち「成長投資枠」は1200万円)で、「生涯非課税限度額」として管理される。最大のポイントは、この1800万円の総枠が簿価(取得価額)で管理され、保有金融商品を売却すると簿価が減少し、翌年に枠が「復活」する点である。半永久的に非課税枠の再利用ができるようになることで、運用商品の見直しや、資金が必要になったタイミングで引き出すことも含め、柔軟な対応が可能になる。この点は、新NISAの最大の特徴であり、魅力の一つともいえる。

バランス型もおすすめ

 先述した通り、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は同時に利用することも可能だが、投資初心者ならまずは「つみたて投資枠」で、「全世界株式」のインデックスファンドの積み立てから始めることをおすすめしたい(表2、拡大はこちら)。この積み立てを土台にして、資金の性格や投資可能年数に応じて、成長投資枠の使い方を検討するとよい。積み立ては、少額から始められ、投資初心者にもおすすめしやすい投資方法だが、一定の成果が出るまでには年単位の時間がかかることもある。したがって、「つみたて投資枠」に関しては、取り崩すことは想定せず、腰を据えて資産の積み上げに専念した方が賢明だ。

 商品を「『全世界株式』のインデックスファンド」としたのは、コストを抑えながら手軽に国際分散投資を実現できるため。「全世界株式」は、文字通り、日米欧のほか、新興国を含む「全世界」の株式に幅広く投資できる。現在は、米国株が人気・実力ともに頭一つ抜けているが、長い目で見た時、どの地域にどのタイミングでスポットライトが当たるかは分からない。こうした点を踏まえても、広い地域を網羅したインデックスファンドをまずは押さえておきたい。

 投資信託とはいえ、最初から株100%の投資に抵抗がある人、または、投資に充てられる時間に制約がある(おおむね5年以内)人にはバランス型もおすすめしたい。例えば、ファンド名に「○○型」と入っているタイプは、株式の組み入れの大小に応じて、同じシリーズで複数のファンドが展開されている。この中でも、債券が5割程度組み入れられている「標準型」や「安定成長型」などを選択肢に入れるとよいだろう。通常の株式インデックスファンドほど高いリターンは期待できないが、相場急変時に元本が大きく毀損(きそん)するリスクも避けられる。

「成長投資枠」は、「つみたて投資枠」で資産形成の土台を作った上での利用が想定されている。このため、特定の投資テーマを掲げて銘柄を選定するタイプの投資信託や、値動きの大きい新興国株式に投資するタイプもラインアップに含まれている。いずれも、投資経験者向けの商品である。投資における自己責任の原則は、投資経験の有無に関係なく適用される。くれぐれも「NISAの対象商品だから何を買っても安心」とは思わないでほしい。使い方を間違えると、失敗につながる恐れもある。

 テーマ型の注目ファンドとしては、テクノロジー関連企業に特化して投資を行うタイプがある。この多くは、個別株でも人気の高い、半導体関連銘柄を組み入れている。半導体関連銘柄は、いわゆる値がさ株(1単元当たりの株価が高い企業)が多い上、株価の値動きも大きいことから、個別株投資のハードルが高い。そうした銘柄に効率よく、まとめて投資できるというのも投資信託の利点である。個別株投資へのステップアップとして活用してもよいだろう。

高配当・連続増配株も

 また、新興国株式についても同様に投資信託を活用することで、インドのような、個人では直接投資ができない国にも投資が可能になる。この際、単体で高いリターンを狙おうとするのではなく、あくまでも分散投資の観点で、先述した全世界株式インデックスなどとの併せ持ちをおすすめしたい。

 分散投資のパーツとしては、高配当株と連続増配株も押さえておきたい。相対的に高い配当を支払う高配当株は、銀行、通信、公益をはじめとする成熟産業に多くみられる。ハイテク株のように企業の急成長による大きな株価の上昇は見込みにくい半面、安定した配当を受け取れる安心感があり、株価も相対的に安定している。

 連続増配株は、文字通り、毎期配当を増額している企業を指す。これらの企業は、高いブランド力を誇るだけでなく、財務面の安定性にも強みがある。高配当株と同様、景気低迷期でも底堅いリターンを期待できるのが魅力だ。なお、米国株式市場では、25年以上にわたり毎年連続で配当を増やし続けてきた企業を「配当貴族」という。これらの企業を束ねた「配当貴族指数」に連動するインデックスファンドは、米主要大型株で構成されるS&P500指数や全米株式などのグロース指数と補完関係にあり、相性が良い。

(篠田尚子・楽天証券資産づくり研究所副所長、ファンドアナリスト)


週刊エコノミスト2023年9月12日号掲載

投信道場 長期資産形成を強力に支援 まずは「全世界株」で分散投資=篠田尚子

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