巨額赤字の首都の足 頼みの連邦追加補助金は来季ゼロに 峰尾洋一
有料記事
ワシントンDCの地下鉄は営業キロ数208キロで、米国ではニューヨーク(399キロ)に次ぐ長さを誇る。こう書くと非常に立派に聞こえるが、当地に住み、実際に使ってみると、そうでもない現実が見えてくる。
ワシントンの地下鉄はワシントンメトロと称され、路線数は6、駅数は98に及ぶ。東京メトロと比較してみると、こちらは営業キロ数こそ195キロとワシントンメトロにやや及ばないが、路線数は9。駅数は180と倍近い。
そして何より違うのが利用者数だ。2019年、新型コロナウイルス禍前の東京メトロの利用者数は1日990万人。かたやワシントンメトロのそれは19年7月平日のデータだが64.8万人に過ぎない。
この数字を見れば想像に難くないが、ワシントンメトロの収益性は低い。ワシントンメトロを運営するWMATAの19年6月期の決算数値(地下鉄以外にバスの収支も含む。地下鉄とバスの内訳は開示されず)だが、営業収益が7億9000万ドル(1153億円)に対して営業費用が30億8800万ドル(4509億円)で、営業利益がマイナス22億9800万ドル(3355億円)に上る。巨額の赤字の多くは毎年、周辺の自治体からの補助金で補填(ほてん)される。
乗客減少、費用は急増
運賃は初乗り2ドル(292円)~最大6ドル(876円)であり、特に東京メトロ(180~330円)と比較して安いわけでもない。それにもかかわらず、ここまで赤字が膨らむ理由は、利用者数が少なく、人件費や償却などの固定費を賄えないからだろう。
問題をさらに複雑にさせたのがコロナ感染だ。コロナ禍の21年以降、感染前の営業収益に匹敵する年間7億ドル(1022億円)に及ぶ追加の連邦補助金が給付されており、感染による大幅な運賃収益減を補ってきた。その間、利用者数はコロナ前までは回復せず、一方インフレなどで費用は急増し、連邦追加補助金頼みの決算になっていた。そ…
残り564文字(全文1364文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める