米国内での送電網への接続阻む許認可の壁 平田智之
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米バイデン政権は、脱炭素を掲げつつ、内外からの投資促進を狙い、インフラ投資雇用法やインフレ抑制法などの大型法案を成立させてきた。確かに当地では多くの専門家からその経済効果について評価の声を聞く。
接続許可に平均5年
しかし、プロジェクトは順調に進んでいるのだろうか。電力セクターでは地域送電網の構築と発電設備の送電網への接続が課題とされているが、連邦政府、州及び関連する地域送電機関の許認可の複雑さから適時に進んでこなかった。送電規制をつかさどる連邦エネルギー規制委員会は昨年末時点で2000ギガワット以上の発電・電力貯蔵設備が接続許可待ちで、各プロジェクトの接続許可まで平均5年はかかる状況と発言している。
一言で許認可手続きと言っても関連する法令は広範にわたる。環境規制でいえば、歴代大統領は各連邦機関に環境影響評価を求める国家環境政策法(1970年)を根拠に大統領令を出し、ホワイトハウスの環境諮問委員会がその運用のためのガイダンス作成などを行ってきた。これに加え、プロジェクト固有の特徴について別の法令や大統領令が存在し、更に、州やコミュニティーごとの規制が存在し、内容が異なることが許認可の複雑さに拍車を掛けている。
許認可改革は共和党、民主党双方において注目のテーマとなってきた。共和党は伝統的に「小さな政府」の観点から、産業界にとって過剰な規制を緩和しようという動きとなる。トランプ政権時代には、大統領令により、インフラプロジェクトについて、環境審査及びその後の建設許可に至る連邦政府内の手続き期間短縮を決めた。
これに対し、民主党は歴史的には環境保護やコミュニティーの権利保護という観点で規制保護のスタンスを取ってきたが、最近は経済活動の脱炭素化に貢献するクリーンプロジェクトの開発などを促進するために許認可改革を肯定する動きが見られている。バイデン大統領は、就任早々、前述のトランプ…
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週刊エコノミスト
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