新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

関東大震災100年 助け合いや財界の責任について学ぶ 井上寿一

 今年の9月1日で関東大震災の発生から1世紀がたつ。この1世紀の間も震災は絶えることがなかった。12年前には東日本大震災が起きている。この大震災の際に、当初は海外メディアから日本人の助け合いと譲り合いが称賛された。しかし、その後はどうだったか。国と国民がこぞって被災地の復興に尽力したとは言いがたい。今も避難民は3万人を数える。また大震災の発生後、福島第1原子力発電所の事故の関連を含むさまざまなデマがSNS(交流サイト)などを通して拡散された。このようなことでは関東大震災から何を学び継承したのか、疑問を抱かざるをえない。

 土田宏成『災害の日本近代史』(中公新書、902円)によれば、災害の直後には「災害ユートピア」が生まれるという。東日本大震災の時の助け合いと譲り合いはこの「災害ユートピア」の萌芽(ほうが)だったのかもしれない。しかしどちらの「災害ユートピア」も長く続くことはなかった。また関東大震災の際のデマによる朝鮮人殺傷事件が民衆の自発的な行動だったことは、東日本大震災の際のSNSによるデマの拡散と通底するものがある。どちらも人災と呼ぶべきだろう。

 本書は指摘する。「災害ユートピア」を…

残り423文字(全文923文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事