これも時代の流れ? 書店ブックカバーの有料化 永江朗
書店で本を買うと、その店オリジナルのブックカバーをつけてくれる。そんな慣習がなくなるかもしれない。
リブロやあゆみブックス、パルコブックセンターなどを展開する書店チェーンのリブロプラスは、9月15日からブックカバーを有料化した。全サイズ各1枚につき、通常のブックカバーは5円、エコ素材のものは50円。リブロプラスの親会社である大手取次の日本出版販売(日販)は、2022年春から書店店頭でエコ活動を企画・支援する「ONE ECO PROJECT」を実施してきた。23年3月からは鳥取、島根、岡山、広島、山口の中国5県を所轄する中国経済産業局と共同で、積分館書店等でブックカバーの有料化を行ってきた。リブロプラスでの有料化はその全国拡大版だ。
ブックカバーは日本独特の習慣で、大正時代に始まったといわれる。本を汚さないためとか、精算済みであることを示すためとか、その目的には諸説ある。何を読んでいるのか他人に知られたくないという読者の心理に応えるところもあったろう。
デザインに工夫を凝らす書店も多く、コレクターもいる。1984年には書皮友好協会が結成され、書皮大賞を選定したり、書籍『カバー、おかけしますか?』を刊行したりした。同書は続編も出たから、愛好する人は少なくなかったのだろう。
これは蛇足だが、筆者が1980年代に働いていた洋書店はカバーを掛けなかった。「ヨーロッパでもアメリカでも、本にカバーなんか掛けない」と先輩社員に教えられた。
容器包装リサイクル法ができたことでカバーに対する風向きが変わった。プラスチック製の手提げ袋が有料化されるだけでなく、カバーを希望する場合はその旨を告げるよう客に促す書店が増えた。カバーを有料化する書店も3年ほど前からあらわれていた。ここ最近はカバーの用紙代や印刷代などの高騰で書店の負担は大きくなっていた。
レジ袋の有料化が定着したように、ブックカバーの有料化も広がるだろう。いや、出版社がつけたカバー(ジャケットともいう)に、さらにカバーを掛けるという慣習そのものがなくなっていくだろう。
この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。
週刊エコノミスト2023年10月10・17日合併号掲載
永江朗の出版業界事情 書店ブックカバーが有料化へ