教養・歴史小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

日本の自殺率は先進国の中でも高いといいます。何か私にできることは?/187

エミール・デュルケーム(1858~1917年)。フランスの社会学者。社会学の方法論を確立した人物といっていい。著書に『社会分業論』などがある。(イラスト:いご昭二)
エミール・デュルケーム(1858~1917年)。フランスの社会学者。社会学の方法論を確立した人物といっていい。著書に『社会分業論』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q 日本の自殺率は先進国の中でも高いといいます。何か私にできることは? 自ら命を絶つ若者のニュースを見るたび、心を痛めています。日本の自殺率は先進国の中でも高い方だといいます。何か私にできることはないものでしょうか。(会社員・60代男性)

A 社会の構成員との自覚を持ち、希望生む声かけや脱抱え込みの“伴走”をしよう

 たしかに日本の自殺率は高いですね。こんなに豊かな国なのにと思いますが、自ら命を絶つ人の事情はさまざまです。ただ、一つだけいえるのは、それは決して個人の側に原因があるのではなく、社会の側に主たる原因があるということです。

 かつてフランスの社会学者エミール・デュルケームが、『自殺論』でそのことを明らかにして以来、もはや常識になっているといっても過言ではありません。彼は自殺について、社会的原因ごとに三つに類型化しています。

 一つ目は、自己本位的自殺です。行き過ぎた個人主義の中で、社会的絆が失われ、人は孤独にさいなまれます。そのせいで命を絶ってしまうのです。

 二つ目は、集団本位的自殺です。これは逆に、集団があまりにも強く個人を従属させているような場合、その集団からのプレッシャーに耐えられず、自殺するというものです。組織のトップが不祥事の責任を取って自殺するようなケースです。

 三つ目は、アノミー的自殺です。アノミーとは、社会が乱れて統制がとれていない状態のことをいいます。とりわけ現…

残り760文字(全文1360文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事