教養・歴史アートな時間

アガサ・クリスティーの人気戯曲を新訳・新演出で 濱田元子

釆澤靖起(左)と永宝千晶 宮川舞子撮影
釆澤靖起(左)と永宝千晶 宮川舞子撮影

舞台 俳優座劇場プロデュース「検察側の証人」

 物語の最後の一瞬まで目が離せない──。「検察側の証人」は、法廷サスペンスの傑作だ。作者は「ミステリーの女王」と呼ばれた英国の作家、アガサ・クリスティー(1890〜1976年)。1920年に『スタイルズ荘の怪事件』でデビューして以来、刊行された書籍の累計は20億部以上と推定されるという。

「小さな灰色の脳細胞」を持つベルギー人探偵、エルキュール・ポアロや、セント・メアリー・ミード村に住む鋭い推理力を持つ老婦人ミス・マープル、おしどり探偵のトミーとタペンスを生んだ。彼らが活躍する推理小説は映画やドラマにもなり、日本でも多くのファンを持つ。

 長編、中短編小説だけでなく、戯曲も書いている。「ねずみとり」と並んで上演人気が高いのが本作だ。

 もともとは33年に刊行された短編集『死の猟犬』に収録された小説で、クリスティー本人によって戯曲化。53年に初演された。57年にはビリー・ワイルダー監督により「情婦」のタイトルで映画化され、タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒらが出演した。

 日本でもさまざまなプロダクションで上演されているが、俳優座劇場プロデュースでは83年に第2回公演として上演され、7年間にわたって全国を回った作品だ。今回、34年ぶりに、小田島恒志・小田島則子の新翻訳、高橋正徳(文学座)の新演出、新キャストでよみがえる。

 サー・ウィルフレッド・ロバーツ弁護士(金子由之)の元をレナード・ヴォール(釆澤靖起)が訪れる。感じのいい青年だが、偶然…

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