習氏の“大国外交”失速か G20サミットも国連総会も欠席 金子秀敏
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中国の習近平国家主席(70)の外交活動が急に鈍ってきた。米国と張り合う「大国外交」に衰えが見える。
経済の悪化や国内の政情不安が高まっているとの見方や、習氏の健康状態が良くないとの見方など諸説あるが、独裁者の指導力の衰えは台湾海峡や南シナ海で不測の事態を生む恐れが高まっている。
変調の始まりは8月、中露主導で開かれた南アフリカでの新興5カ国(BRICS)首脳会議だ。習氏は500人にのぼる随員を従えて南アに乗り込んだ。首脳会議で5カ国のメンバーを11カ国に増やさせ、鉄道や通信設備など100億ドル規模のインフラ投資を約束した。新加盟の6カ国はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、アルゼンチンで、中国の「一帯一路」構想を中東、アフリカ、南米へ広げる要石となる。
中国は貿易の決済をデジタル人民元にして米ドル覇権を打破する野望を隠さなかった。当初はやる気満々に見えた習氏だが、首脳会議前の経済フォーラムの演説を予告なしに休んだ。同行した王文濤商務相が急きょ、演壇に立ち原稿を代読した。
くすぶる「体調悪化説」
習氏はその後の首脳会議には出席した。だが、会場の入り口で同行の通訳が警備員に入場を阻まれ、習氏が立ち往生する場面があった。演説代読の理由は明らかでないが、習氏の健康管理を担当する部門の党幹部が後に逮捕された。「習氏は中気(脳卒中)の発作を起こした」とうっかり口にしたためだという。これが事実とすれば習氏は言語に障害が出たのか。
この後、習氏は9月上旬、インドで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を欠席した。主催国インドのモディ首相が、中国に対抗してグローバルサウスのリーダー役を演じる意欲をあらわにしていた。インドに接近している米国のバイデン大統領も出席する。習氏が欠席すればG20で中国の存在感は薄れる。
だが中国は外交素人の李強首相…
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週刊エコノミスト
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