中国で設立相次ぐ地方政府ファンド 脱“不動産依存”への一手 神宮健
政府誘導ファンド(引導基金)を設立する地方政府が相次いでいる。報道ベースで見ると、2023年上半期では西安市、広州市、安徽省、重慶市、浙江省、杭州市、蘇州市、江西省が1000億元(約2兆1000億円)規模のファンドを設立した。
政府誘導ファンドとは、政府が設立・出資し、社会資本(金融機関、企業など)の資金を引き入れたファンド。主に産業政策に基づいてベンチャーキャピタル(VC)ファンドなどに投資するもので、一種の私募ファンドだ。主に財政省、国家発展改革委員会などの監督下で約20年の発展の歴史があり、投資先は当初は創業企業だったが、その後、新興産業、中小企業、産業高度化、インフラ建設、公共サービスなどの分野にも拡大している。
地方政府の関与が社会資本参画の「呼び水」になり、ファンド全体の規模を拡大する効果がある。例えば、江西省が設立した「現代産業誘導基金」では、地方政府出資300億元(約6300億円)に対して、社会資本からの資金は1200億元(約2兆5000億円)となり、最終的には3000億元規模を目指しているという。
最近はこうした大型誘導ファンドの設立が増えていることに加えて、省・市レベルだけでなく、県レベルでの設立が増えていること(中国の地方政府は、省、地級市、市・県、郷鎮からなる)や、経済の発展した東部から中西部へと地域が広がっていることなどが特徴に挙げられる。
各地の地方政府が誘導ファンドの設立に積極的な背景には、新型コロナウイルス禍の影響や土地使用権譲渡収入の減少により、地方政府の財政難がさらに深刻化する中で、不動産依存といった従来型の経済発展モデルからの転換を迫られていることがある。
社会資本の引き入れにより、ファンド規模を財政資金の出資額の何倍かに拡大できる点は、財政難の中で景気浮揚や雇用維持を求められる地方政府にとっては大きなメリットになっている。
誘導ファ…
残り571文字(全文1371文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める