支持率は下げ止まれど浮かばず “岸田スタイル”不発で秋の陣へ 松尾良
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人々が9月の長い残暑に辟易(へきえき)する一方で、永田町の温度はじわじわと変わってきた。内閣支持率の低迷が続く岸田文雄首相が、局面を打開しようと動いたからだ。成否はまだはっきりしないが、それでも政権再浮揚と年内の衆院解散・総選挙があるかどうかを巡って、与野党は首相独特の「じらし戦術」に半ばあきれ、半ば振り回され続けている。
楽観論と政策アピール
8月、報道各社調査による岸田文雄内閣の支持率は、政権発足以降の最低水準で推移した(毎日新聞は前月比2ポイント減の26%)。ただ各社とも横ばい・微減にとどまり、これが下げ止まりか、さらなる下落への踊り場なのかは判別がつかなかった。
かつて首相は周囲に「支持率は下がる時もあれば、また上がる時もある」と楽観的に語っている。昨年後半、旧統一教会問題と安倍晋三元首相の「国葬」への対応で政権は窮地に追い込まれたが、批判が一服した今年初めから5月のG7広島サミットにかけて徐々に回復した。これが首相の成功体験になっているのだろう。
2度目の反転攻勢を狙う首相はこの夏、メディアを通じて国民に発信する機会を急増させた。「先送りできない課題に一つ一つ答えを出す」。政策を着実に実行する姿を強調し、自身のリーダーシップを印象づける意図は明らかだ。
実際、懸案も立て続けだった。首相は8月22日、自民、公明両党の政調会長に対し、高騰するガソリン価格対策を月内にまとめるよう求めた。「大車輪で成案を得る」と記者団に胸を張ったが、担当閣僚を飛ばしていきなり与党に指示を降ろし、寝耳に水の官僚サイドが困惑する一幕もあった。
東京電力が福島第1原発の処理水を海に放出し始めた8月24日には、記者向けの資料とモニターをわざわざ用意し、処理水対応の万全さ、さらには政府のマイナンバー問題への取り組みについても説明した。
海外パビリオン建設の遅れが発覚した2025年大阪・関西万博を巡っては、8月31日に関係閣僚や吉村洋文・大阪府知事らを官邸に集め、「成功に向けて政府の先頭に立つ」と宣言した。大阪での失地回復に苦戦する自民党には「どうせ万博の手柄は日本維新の会に持っていかれる」と冷ややかな空気が漂うが、トラブルが起きれば結局は首相のメンツに関わる。それに加えて「政府主導を印象づけ、維新のお株を奪うつもりでは」との見方も出た。
そして内閣改造・自民党役員人事である。9月11日からの週か、25日の週かを与党にもなかなか伝えず、散々じらした後の10日、首相は外遊先のインドでようやく「13日実施」を表明した。
こと政局となると、首相はぎりぎりまで悩む習性があるようだ。6月の通常国会…
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週刊エコノミスト
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