AIでパッケージデザイン作成を支援――小川亮さん
プラグ社長 小川亮
生成AIで企業のパッケージデザインを評価したり、作成を支援するビジネスを展開している。(聞き手=稲留正英・編集部)
デザイン会社とマーケティングリサーチ会社が2014年に合併して誕生しました。社名の「プラグ」には、リサーチとデザインで顧客のブランドを輝かせるプラグのような会社になりたいという思いを込めました。主な顧客は食品や飲料、化粧品、医薬品メーカーなどの大手企業で、商品のパッケージデザイン開発のお手伝いをしています。
事業の一環として、生成AIを使って、企業のデザイン開発や評価をサポートするビジネスを19年からスタートしました。従来、企業は消費者を対象にパッケージデザインの調査を行いますが、その期間は1~2カ月で、費用も100万円から300万円掛かります。これを、AIにデザインを評価させると、その良しあしが10秒で判明します。評価の価格も1画像で1万5000円、3画像でも4万5000円です。月額課金もあり50万円で使い放題です。
メリットはコストだけではありません。企業は通常、デザインの開発を半年程度掛けてします。その間に何回も調査してデザインをブラッシュアップしていきます。これまでは、このサイクルが良くて1回か2回でしたが、AIなら低コストで10回でも20回でもできます。その結果、従来のやり方に比べ、デザインがかなり向上するのです。実際、当社の顧客では、カルビーの「クランチポテト」の売り上げが、パッケージのリニューアル後に1.3倍に、味の素の「マッケンチーズ」は計画に対し、1.5倍になっています。昨年11月の時点で、860社以上の企業が使っています。
デザインの評価にAIを導入したきっかけは、合併後の15年からいろいろなパッケージデザインの自主調査を年2回始めたことです。今、どういうデザインがはやっているか、デザインに大事なことは何か、などをまとめ、リポートして発表していましたが、その過程で大量のアンケートがたまってきました。このデータをAIを使って解析すれば、「良いデザインとは何か」を客観的に評価できるのではないかと考えました。
伊藤園のお茶がAIデザイン1号に
21年からは生成AIを使ったパッケージデザインの生成ビジネスも開始しました。AIに希望するデザインについて指示を与えると、大量のデザイン候補が出来上がります。我々はパッケージデザインが得意なので、AIでうまく画像が生成できるように独自にチューンアップしています。今回、伊藤園の「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージのリニューアルにこの画像生成AIを使いました。おそらく、日本でAIを使ったパッケージデザインの第1号になります。
今回、生成AIのビジネスをやってみて分かったのは、AIはデザイナーの創造性にすごく寄与するということです。AIは、デザイナーが考えてもみなかったデザインを生成することがあります。人が自ら制限している思考を一度、ぶち壊すのです。我々は、今後もこうしたツールをどんどん広げていきたいと考えています。10月には商品のネーミングでも生成AIを活用するサービスを導入する計画です。
企業概要
事業内容:パッケージデザイン、マーケティングリサーチ、デザインAIの開発・提供
本社所在地:東京都千代田区
設立:2014年7月
資本金:6100万円
従業員数:75人
週刊エコノミスト2023年10月10・17日合併号掲載
小川亮 プラグ社長 AIでパッケージデザイン作成を支援