10年迎えた「一帯一路」 中国経済減速で「量から質」へ 河津啓介
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中国の習近平国家主席が経済圏構想「一帯一路」を提唱して10年を迎えた。現代版シルクロードと銘打ち、当初はユーラシア大陸の東西を結ぶ陸と海のルートで経済関係を強化する枠組みとされた。その後、範囲は中南米や太平洋の島国、北極圏に拡大。関連事業は鉄道や道路などのインフラ建設から宇宙開発にまで及ぶ。
その評価は毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい。国際秩序を揺るがす試みとして、米欧が警戒心を強める一方、新興・途上国には歓迎する声が根強い。
オンライン外交誌「ザ・ディプロマット」のシャノン・ティエッジ編集長は同誌の記事(9月12日)で「9月時点で一帯一路の参加国は154カ国あり、国連加盟国の8割に相当する」と指摘。その規模について「対中関係に抱く『期待』が『懸念』を上回っている国々の表れと捉えるべきであり、世界の大多数が中国との『デカップリング』に関心がないことを再認識させてくれるという意味で重要だ」と分析した。
一帯一路を巡っては、途上国を借金漬けにして影響下に置く「債務のわな」が指摘されてきた。ただ、英『エコノミスト』誌の記事(9月9日)は「むしろ中国の銀行はリスクを適切に評価せず融資を行うことで、自らが(不良債権を抱える)わなに陥っている」と見る。国内の成長鈍化も相まって中国は軌道修正を迫られており、対外融資も縮小傾向にあるという。
実際、習指導部は「量から質」への転換を目指している。代表例がグリーンエネルギーの海外展開だ。習氏は2021年の国連総会でのオンライン演説で「外国での石炭火力発電所の新規建設を行わない」と明言し、途上国の脱炭素化を支援する意欲を強調した。
環境NPO「チャイナダイアローグ」は公式サイトのリポート(9月7日)で一帯一路への専門家の見方を紹介。英シンクタンク「海外開発研究所(ODI)」のユンナン・チェン氏は「中国の低コストなクリーン技術は、途上国に低炭素成…
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週刊エコノミスト
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