米ビッグスリーで前代未聞の3社一斉スト 株主・経営陣優先に不満爆発 岩田太郎
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全米自動車労組(UAW)と3大自動車メーカー(ビッグスリー)の賃上げ交渉が決裂し、UAWは9月15日に一部工場で前例のない3社従業員の一斉ストライキに突入した。米国ではこの他にも運輸やサービス部門などで労働争議が相次いでおり、その意義が議論されている。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は9月16日付の記事で、「米労働者は四半世紀ぶりの高い率で労働争議に参加しており、米労働統計局によれば8月に延べ410万の就業日がストで失われた」と説明した。
その理由について、スタンフォード大学経済政策研究所の労働経済学者であるジョン・ペンカベル上席研究員は、9月5日付の同大学広報サイトで、「労働者たちは、システムが不公平だと見ている。実際に、企業収益が増加しているにもかかわらず、それに占める賃金の割合が低下していることは、各種研究が示すところだ」と説明した。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』は9月16日付の解説記事で、「左派寄りの米シンクタンクである経済政策研究所によれば、インフレ調整後の米自動車産業の賃金は2008年の水準から19%下落している」と指摘。一方、米ニュースサイトの「インサイダー」は9月16日付の記事で、「(ストが行われているビッグスリーの一角である)ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ会長は22年に、4年間で34%増の2900万ドル(約42億円)の報酬を得た」と報じた。
ニューヨーク・タイムズの経済コラムニストであるピーター・コイ氏は9月15日付の記事で、「自動車メーカーは、電気自動車(EV)シフトに多額の投資が必要であるため賃上げ幅を圧縮しなければならないと主張するが、莫大(ばくだい)な株主還元や経営者への報酬支払いの増大を見ると、説得力に欠ける」と論じた。
米金融調査企業CFRAの上席アナリストであるギャレット・ネルソン氏は同記事で、「自動車メーカーに…
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週刊エコノミスト
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