国際・政治論壇・論調

米ビッグスリーで前代未聞の3社一斉スト 株主・経営陣優先に不満爆発 岩田太郎

スト中の全米自動車労組(UAW)の労働者たち(2023年9月、米ミズーリ州のゼネラル・モーターズ工場前で)
スト中の全米自動車労組(UAW)の労働者たち(2023年9月、米ミズーリ州のゼネラル・モーターズ工場前で)

 全米自動車労組(UAW)と3大自動車メーカー(ビッグスリー)の賃上げ交渉が決裂し、UAWは9月15日に一部工場で前例のない3社従業員の一斉ストライキに突入した。米国ではこの他にも運輸やサービス部門などで労働争議が相次いでおり、その意義が議論されている。

 米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は9月16日付の記事で、「米労働者は四半世紀ぶりの高い率で労働争議に参加しており、米労働統計局によれば8月に延べ410万の就業日がストで失われた」と説明した。

 その理由について、スタンフォード大学経済政策研究所の労働経済学者であるジョン・ペンカベル上席研究員は、9月5日付の同大学広報サイトで、「労働者たちは、システムが不公平だと見ている。実際に、企業収益が増加しているにもかかわらず、それに占める賃金の割合が低下していることは、各種研究が示すところだ」と説明した。

 米紙『ニューヨーク・タイムズ』は9月16日付の解説記事で、「左派寄りの米シンクタンクである経済政策研究所によれば、インフレ調整後の米自動車産業の賃金は2008年の水準から19%下落している」と指摘。一方、米ニュースサイトの「インサイダー」は9月16日付の記事で、「(ストが行われているビッグスリーの一角である)ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ会長は22年に、4年間で34%増の2900万ドル(約42億円)の報酬を得た」と報じた。

 ニューヨーク・タイムズの経済コラムニストであるピーター・コイ氏は9月15日付の記事で、「自動車メーカーは、電気自動車(EV)シフトに多額の投資が必要であるため賃上げ幅を圧縮しなければならないと主張するが、莫大(ばくだい)な株主還元や経営者への報酬支払いの増大を見ると、説得力に欠ける」と論じた。

 米金融調査企業CFRAの上席アナリストであるギャレット・ネルソン氏は同記事で、「自動車メーカーに…

残り608文字(全文1408文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事