ドイツはG7唯一のマイナス成長予測 景気対策に新味なし 熊谷徹
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ドイツでは、ロシアのウクライナ侵攻以来のインフレで内需が冷え込むなど、景気の減速が深刻化、景気浮揚策の財源をめぐり激しい論戦が起きている。
ドイツの保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は9月6日付電子版で「世界経済研究所(IfW)が、今年のドイツの国内総生産(GDP)成長率をマイナス0.3%からマイナス0.5%に下方修正した。理由は、金利上昇、エネルギー費用の高騰、国内消費の減少、中国経済の停滞による輸出や工業生産の低調だ」と報じた。国際通貨基金(IMF)が7月に公表した世界経済見通しによると、G7(主要7カ国)で今年マイナス成長が予想されるのはドイツだけだ。
ドイツ公共放送連盟(ARD)の8月30日付ニュースサイトによると、ショルツ政権は景気を活性化させるために、同日「成長機会法案」を閣議決定した。政府は2028年までに企業を中心に税負担を320億ユーロ(5兆1200億円、1ユーロ=160円換算)減らす方針を打ち出したほか、グリーン投資を助成金によって促進する。ショルツ首相は、経済停滞を打破する「ドイツ協定」を提唱し、再エネ発電設備などの設置許可申請の審査期間の短縮、行政のデジタル化・AI(人工知能)活用による官僚主義の削減、交通インフラ整備の加速、EV(電気自動車)や次世代半導体などの工場の誘致、高技能移民を増やすための移民法や国籍法の改正などを打ち出した。
ドイツの経済日刊紙『ハンデルスブラット』は9月7日付電子版で「野党キリスト教民主同盟(CDU)が指摘しているように、首相が提唱したドイツ協定の内容の大半は、計画済みの改革項目の羅列だ。市民が求めているのは、自己PRではなく結果だ」と批判。「ドイツ市町村連盟」は、「成長機会法が施行された場合、営業税など地方自治体の税収が約70億ユーロ(1兆1200億円)減る」として反対している。
ショルツ政権に…
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週刊エコノミスト
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