新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 論壇・論調

ドイツはG7唯一のマイナス成長予測 景気対策に新味なし 熊谷徹

給油するトラック。エネルギー高騰は経済不振の原因だ(2023年7月、ミュンヘン) Bloomberg
給油するトラック。エネルギー高騰は経済不振の原因だ(2023年7月、ミュンヘン) Bloomberg

 ドイツでは、ロシアのウクライナ侵攻以来のインフレで内需が冷え込むなど、景気の減速が深刻化、景気浮揚策の財源をめぐり激しい論戦が起きている。

 ドイツの保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は9月6日付電子版で「世界経済研究所(IfW)が、今年のドイツの国内総生産(GDP)成長率をマイナス0.3%からマイナス0.5%に下方修正した。理由は、金利上昇、エネルギー費用の高騰、国内消費の減少、中国経済の停滞による輸出や工業生産の低調だ」と報じた。国際通貨基金(IMF)が7月に公表した世界経済見通しによると、G7(主要7カ国)で今年マイナス成長が予想されるのはドイツだけだ。

 ドイツ公共放送連盟(ARD)の8月30日付ニュースサイトによると、ショルツ政権は景気を活性化させるために、同日「成長機会法案」を閣議決定した。政府は2028年までに企業を中心に税負担を320億ユーロ(5兆1200億円、1ユーロ=160円換算)減らす方針を打ち出したほか、グリーン投資を助成金によって促進する。ショルツ首相は、経済停滞を打破する「ドイツ協定」を提唱し、再エネ発電設備などの設置許可申請の審査期間の短縮、行政のデジタル化・AI(人工知能)活用による官僚主義の削減、交通インフラ整備の加速、EV(電気自動車)や次世代半導体などの工場の誘致、高技能移民を増やすための移民法や国籍法の改正などを打ち出した。

 ドイツの経済日刊紙『ハンデルスブラット』は9月7日付電子版で「野党キリスト教民主同盟(CDU)が指摘しているように、首相が提唱したドイツ協定の内容の大半は、計画済みの改革項目の羅列だ。市民が求めているのは、自己PRではなく結果だ」と批判。「ドイツ市町村連盟」は、「成長機会法が施行された場合、営業税など地方自治体の税収が約70億ユーロ(1兆1200億円)減る」として反対している。

 ショルツ政権に…

残り643文字(全文1443文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事