教養・歴史 小川仁志の哲学でスッキリ問題解決

Q ヤングケアラーの支援、自分で何かできることはないでしょうか/190

マイケル・スロート(1941年〜)。アメリカの倫理学者、哲学者。徳倫理やケアの倫理のほか、心の哲学が専門。著書に『動機からの道徳』などがある。(イラスト:いご昭二)
マイケル・スロート(1941年〜)。アメリカの倫理学者、哲学者。徳倫理やケアの倫理のほか、心の哲学が専門。著書に『動機からの道徳』などがある。(イラスト:いご昭二)

Q ヤングケアラーの支援、自分で何かできることはないでしょうか 厚生労働省が、ヤングケアラーの支援を強化するとの方針を打ち出しました。家庭のことは大人でも人に話しにくいので、なかなか介入するのが難しいと思うのですが、何かできることはないでしょうか?(福祉関連事業勤務・40代男性)

A 「成熟した共感」を意識し、同情ではない相手の状況と関心に応じたニーズを探そう

 ヤングケアラー、つまり本来は大人が担うべき家族の介護や仕事、家事などを担っている若者たちが多くいるといいます。最近ようやく調査が始まりましたが、実態はよくわかっていません。ご指摘のように家庭のことはなかなか人に話しにくいですし、何より中高生の中には、自分がケアをされるべき立場のケアラーであることに気づいていない人も多いようです。

 そうなるとなかなか介入が難しくなってきます。だからといって何もできないかというと、決してそんなことはないでしょう。参考にしたいのは、アメリカの倫理学者マイケル・スロートの考えです。

 スロートは、「ケアの倫理」と呼ばれる分野で新機軸を打ち立てています。ケアの倫理とは、何が正しいかを重視する従来の倫理学と異なり、どう応じるべきかを重視する立場であるといわれます。とりわけスロートの場合、「成熟した共感」と呼ばれる態度によって応じるべきだと主張しています。

周りの大人が耳傾ける

 成熟した共感というのは、共感の全…

残り759文字(全文1359文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事