鳥島近海で地震頻発 地すべりかマグマ活動で津波/163
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10月9日早朝に東京都・伊豆諸島の鳥島近海を震源とする14回の地震が発生し、八丈島で60センチの津波を観測した。それに伴い本州や九州の太平洋岸の広範囲で潮位の変化があったが、いずれも20~60センチで大きな被害はなかった。
気象庁は津波の原因となる地震の震源と規模を特定できなかったため、津波の到達後に伊豆諸島と小笠原諸島などに津波注意報を出したが、正午に解除した。地震はその直前の10月2日から活発になっており、10月5日に発生したマグニチュード(M)6.5の地震では八丈島で30センチの津波が観測されていた。
鳥島近海でこの数日間に発生した津波は、深海底で堆積(たいせき)物が滑り落ちる力で海面が上下して津波が発生する「海底地すべり」を原因とすると考えられている。一方、地震の波形は海底のマグマによる地殻変動や火山噴火で生じるものとも似ている。
海上保安庁は航空機で上空から観測したが、噴火の兆候となる変色水などの海面の変化は確認されなかった。また今回の震源に近い鳥島の南側に位置する海底火山「孀婦岩(そうふがん)」でも変化は確認されていない。鳥島の北側にある「須美寿(すみす)島」付近では10年に1回ほど、マグマの活発化による津波が発生しているため、今回の地震活動域でも今後、同様の現象が起きる可能性がある。
活発な海底火山
鳥島は伊豆諸島と小笠原諸島の中間に位置し、気象庁が「伊豆鳥島」と呼んでいる活火山の無人島である。島の形は直径2.5キロメートルの円形で、高さ3000メートル級の海底火山の山頂部が水面上に出たものである。
1902年に爆発的噴火を起こし、島民125人全員が犠牲となった。39年には中央火口丘の硫黄山(標高394メートル)が形成され、ふもとへ溶岩が流下した。その後も活発な地震活動があり、海岸で変色域が記録されている。65年に起きた群発地震で気象観測所が閉鎖され、以後は無…
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週刊エコノミスト
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