政党政治に対する信頼の重要さを戦前昭和のテロから読み取る 井上寿一
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10月13日に政府は旧統一教会に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。昨年7月8日の安倍(晋三)元首相銃撃事件の影響の結果であることはいうまでもないだろう。今年の4月15日に岸田(文雄)首相襲撃事件が起きたことも記憶に新しい。政治指導者に対する直接行動はこれからも続くのだろうか。
近代日本においてテロが頻発していたことは容易に想像がつく。筒井清忠『近代日本暗殺史』(PHP新書、1100円)は明治時代の6人、大正時代の2人に対するテロを歴史社会学の視点から考察している。近代日本の政治指導者たちにとって、権力の行使と暗殺されるリスクとは表裏一体だったかのようである。
近代のなかでもとりわけ戦前昭和の時代は、要人暗殺の社会的な影響力が強かった。保阪正康『テロルの昭和史』(講談社現代新書、1034円)は、5.15事件や2.26事件だけでなく、1930年代において、毎年のように起きたいくつもの事件を取り上げている。
これらの戦前昭和の事件は、昨年の事件と重ね合わせて考えることができるのか。
本書は共通点とともに、異なる点も指摘する。戦前昭和の事件とは異なって、昨年の事件は、1「単独犯で、集団的なスローガンがなく」、2「決行者の主観としては、テロの政治化が目的ではなく」、3「殺害することがきわめて事務的に行われている」という。
別の言い方をすれば、戦前昭和の事件では、首謀者たちは「昭和維…
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週刊エコノミスト
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