中国の孤立と符合する日本への資金流入 渡辺浩志
今春以降、日本株は海外投資家の買いを原動力に、大きく値を上げてきた。
背景として、①東証の要請に応じた企業の資本効率改善の取り組み(株主還元やガバナンス改革への期待)、②賃金上昇を起点とする内需の好循環(日本経済再興への期待)、③日銀緩和の継続と物価上昇による実質金利の低下(資産インフレへの期待)──が指摘される。これらに加えて、④中国へ向かっていた投資マネーが日本へ流入する可能性にも注目したい。
近年、米国は技術覇権や経済安全保障の観点から、先端半導体やAI(人工知能)の分野で対中輸出規制を強化し、ハイテク製品のサプライチェーンから中国を排除することを目指してきた。一方、中国は、半導体素材の輸出規制などの報復措置を展開している。
また、中国は7月に反スパイ法を改正し、法制度の運用の恣意(しい)性を高めた。中国で事業を行う外国企業は、いつ社員の身柄が拘束されるか分からないという疑心暗鬼から、もはや現地で長期の投資計画を立てることは困難と考え始めている。米中対立が激化し、チャイナリスクへの警戒が高まるなかで、米国をはじめ多くの国々が脱中国依存(デリスキング)を急いでいる。
対中投資が激減
そうした動きを象徴するのが図1だ。外国企業が中国に対する直接投資を激減させている。工場建設など中国…
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週刊エコノミスト
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