経費膨らむ関西万博のゆくえ 大阪のツケは誰が払うのか 野口武則
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先行き不透明感を増す2025年大阪・関西万博を巡り、早くも与野党三つどもえで責任の押し付け合いが始まっている。
開催費用は2000億円規模(うち会場建設費1200億~1300億円、運営費690億~740億円)、入場者数は3000万人以上、経済波及効果は約6兆4000億円──。
16年に大阪府が示した基本構想案にはバラ色の数字が並んでいた。しかし、見通しの甘さが相次いで露呈している。会場経費の上振れは止まらず、海外館の建設は遅々として進まない。国民の関心は盛り上がらず、頼みのチケット販売に不安が募る。このままでは皮算用に終わりかねない。
会場建設費は想定の倍に
中でも問題となっているのが経費の上振れだ。大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」(大阪市此花区)の会場建設費が最大2350億円に膨らむとの見通しを、主催者の日本国際博覧会協会が20日に発表した。
当初見込みから約1.5倍の1850億円に引き上げられたのは20年12月。この時は暑さ対策、水質改善や計画変更などが要因だった。さらに今回、人件費や建設資材の高騰などによる2度目の引き上げで、当初想定の約2倍になった。会場建設費は国と大阪府・市、経済界の3者で均等負担する。
10月6日に上京した大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会共同代表、大阪維新の会代表)は西村康稔経済産業相らと面会し、「地元の自治体として問題意識を持ち、国とも協力しながら進めて参りたい」と支援を要請した。政府は国の追加負担分の一部を23年度補正予算案に盛り込む方針で、秋の臨時国会で争点になりそうだ。
立憲民主党の泉健太代表は記者会見で、大阪市の松井一郎前市長(維新前代表)や吉村氏の名前を挙げて「段取りのまずさがあった。経費増を単に認めれば国民の負担が高まる」と語った。岡田克也幹事長も「大阪府市でしっかり持ってもらいたい」と述べた。
これに対し維新の馬場伸幸代表は「万博は日本の国のイベントだ。主体的に国が負担するのは当然」と反論する。
9月になってようやく岸田文雄首相が重い腰を上げたが、熱量は感じられない。自民党内には「成功すれば維新が自分の手柄だとアピールし、失敗すれば政府や自民に責任を押し付けるつもりだ」と警戒感がくすぶる。
そもそも万博誘致を提唱したのは維新代表だった橋下徹元大阪市長と松井氏である。その後も吉村氏らが万博の成功を選挙公約に掲げて争点化し、勝利してきた。
だが、バラ色の未来を振りまきながら、その後に計画の見通しの甘さが露呈するのは、まるでどこかで見た光景だ。
維新の看板政策だった「大阪都構想」について、橋下、松井両氏は当初こう公…
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週刊エコノミスト
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