戦後史と共にあるゴジラ 初代へのオマージュと最新CGで70年目の新作爆誕 勝田友巳
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映画 ゴジラ-1.0
ゴジラ第1作(1954年)から70年、これほど長寿なのは、ゴジラが時代を託される存在だからだろう。終戦後間もなく現れたゴジラは、核の脅威を背負っていた。続く高度成長期には、明るい明日を運ぶヒーローとなる。低成長期からバブル、その崩壊と停滞期には成長幻想のメッキがはがれ、ゴジラの大暴れも空騒ぎと化した。
しかし東日本大震災と福島第1原発事故を経て、不安と停滞感の中、ゴジラは復活する。庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」では、ゴジラを介して形を変えた核の脅威と日本の危機管理体制が描かれた。「ゴジラ-1.0」を手がけたのは、「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0」と日本の現代史を娯楽作に描いた山崎貴監督。ゴジラはやはり、時代の空気を吸っている。
第二次世界大戦末期、特攻出撃した敷島は小笠原諸島の大戸島に不時着する。ある晩海から巨大生物が現れて島を襲い、駐屯部隊は全滅した。始まって5分でゴジラが全貌を現すのが新機軸。
さて戦後、復員した敷島は他人の子を預かった典子と暮らし始めるが、米国がビキニ環礁で行った核実験でゴジラが目覚め、日本近海に現れる。「大戸島」「ビキニ環礁」と、初代ゴジラへのオマージュは随所に配しつつ、映画の前半、山崎監督はゴジラの脅威もさることながら復興に奮闘する庶民の描写に力を注ぐ。ようやく取り戻した平和な日常を、ゴジラが再び破壊する。いわば戦災の再来である。
連合国軍占領下でも、米ソ関係が緊張し、米軍の支援は早々に封じられる。旧帝国軍は解体させられたし…
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週刊エコノミスト
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