火山爆発指数6以上の破局噴火は食糧危機や気候変動を招く/165
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火山の噴火は火山爆発指数(VEI)によって規模が表現できるが、大規模になると地表への壊滅的な被害だけでなく、世界的な異常気象を引き起こすことがある。VEI6以上の噴火は巨大噴火や破局噴火と呼ばれ、その堆積(たいせき)物から地球規模の気候変動を知ることができる。
1991年のピナツボ火山(フィリピン)の噴火では、火山灰を含む噴煙が成層圏に達した後、硫酸性エアロゾルが3週間で地球を取り巻き、北半球全域へと広がっていった。その結果、92~93年の世界平均気温は約0.4度下がり、日本でも冷夏のため米が不足しタイ米を緊急輸入した。20世紀最大といわれるこの噴火の規模はVEI6で、火口には直径2.5キロメートルの小型カルデラが形成された。
19世紀にはこれを超える破局噴火がいくつも発生し、地球規模の寒冷化を引き起こした。1815年のタンボラ火山(インドネシア)の噴火では大量の火山灰が拡散し、6月に寒波が襲来して8月に霜が降りるようになり、北米大陸で主要作物のトウモロコシが全滅した。
さらに、噴火の翌年から北米と欧州大陸では夏が到来せず、平均気温が例年より4度も低かった。異常低温は翌年以降も続いたため飢えに困った農民が西へ移住し、米国西部の開拓を促す一因となったとされる。噴火規模はVEI7で、噴出源には直径6キロメートルのカルデラが出現した。
「叫び」の赤い空
1883年のクラカタウ火山(インドネシア)でもカルデラ形成を伴う巨大噴火が起こり、放出された火山ガスによって全地球規模の異常気象をもたらした。平均気温は約0.5度低下し、太陽光のうち短波長の青色光が吸収される現象のため世界中の空が赤く染まった。ノルウェーの画家ムンクの名画「叫び」に描かれた赤い空の原因としても知られている。
18世紀には1783年のラカギガル火山(アイスランド)で割れ目噴火によって大量のマグマが噴出し、世界的な寒冷…
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週刊エコノミスト
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