硫黄島の南沖合で新島出現 マグマ活動再開か/167
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小笠原諸島・硫黄島(東京都)の南1キロメートル沖合で10月21日から噴火が発生し、南北400メートル、東西200メートルの新島が出現した。硫黄島は東京から1200キロメートル南にある活火山で、長さ8キロメートル、幅5キロメートルの細長いくさび状の形をしている。第二次世界大戦有数の激戦地でもあり、米兵7000人以上と日本兵2万2000人以上が戦死した。現在は自衛隊の航空基地がある。
硫黄島は全国に50ある「常時観測火山」の一つで、地震計や空振計、GNSS(全地球航法衛星システム)、監視カメラが設置され、気象庁が火山活動の監視・観測を行っている。島内は地中の温度が高く、噴気地帯や噴気孔が数多くあり、小規模の水蒸気爆発を頻繁に繰り返している。地震も多く発生し、体に感じない地震を含めると1日に100回を超えることもある。
昨年7月にはマグマの噴出を伴うマグマ水蒸気爆発が発生し、今年6月に再噴火してから10月の活動に至っている。周辺では海面の変色も確認され、海上保安庁は航行警報を出して付近を航行する船に注意を呼びかけた。10月30日にはマグマ水蒸気爆発が数分おきに発生し、数メートルを超える岩塊を放出する雄鶏の尾のような黒っぽい土砂混じりの噴煙「コックス・テール・ジェット」が観測された。
有数の速度で隆起も
さらに、噴出した軽石が南西方向へ帯状に浮遊している。軽石が集まって筏(いかだ)のように漂流している「軽石筏」で、2021年に海底噴火を起こした福徳岡ノ場の例のように、浮遊する大量の軽石が黒潮に乗って日本の港に漂着すると、漁業や観光業に大きな影響が出る恐れがある(本連載の第75回を参照)。福徳岡ノ場は硫黄島の南南東60キロメートルに位置している。
硫黄島は10万年前ごろにできた直径40キロメートル、高さ2キロメートルの富士山のような大型の成層火山で、その最上部が火山島として海面上に現…
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週刊エコノミスト
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