過去最高値へ条件整う日本株 日経平均3万6000円へ 谷道健太/安藤大介・編集部
日本株が騰勢を強めている。適度なインフレによる金利の復活、円安を受けた企業業績の拡大、賃金の増加、新型コロナの終息によるインバウンド(訪日旅行)の急回復と、日本の株式市場を取り巻く環境はかつてなく良好だ。
そうした中、2024年の株式市場についても、強気の見方が増えている。編集部が本特集に登場する株式市場に詳しい識者13人に24年末の日経平均株価の予想を聞いたところ、平均値は3万6423円だった。今年11月17日終値より9%、3000円ほど高い。同時に聞いた米ダウ工業株30種平均株価の24年末予想は平均3万5946ドル。11月17日比で3%、約1000ドル高だ。米国株に比べた日本株の堅調を見込む声が根強い。
13人中、日本株に最も強気の予想をしたのは、マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストだ。89年12月29日に付けた過去最高値3万8915円を大きく上回る4万2000円を見込む。歴史的な円安を背景に上場企業の好業績が続き、各社が24年5月ごろに発表する25年3月期決算の見通しは今期予想比5%増益と連続で最高益を更新すると見る。株価収益率(PER)が16倍の標準シナリオの場合、日経平均は3万9000円前後に達する。広木氏はPERが16.5倍に上がる強気シナリオでは、日経平均は24年度前半に4万円、年末に4万2000円に達すると語る。
三菱商、三菱UFJ人気
特集では注目する銘柄も聞いた。識者が挙げた延べ120銘柄のうち、3人が三菱商事と三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)を取り上げた。株式評論家の植木靖男氏は三菱商事について、資源・非資源双方の分野で強固な事業基盤を持っているうえ、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が保有していることを材料視する。株式評論家の木村佳子氏は同社が12月29日時点の株主を対象に1株を3株に分割することに注目した。11月17日現在、単元株(100株)を買うには約72万円必要だが、株式分割後の24年1月4日には20万円台で買える可能性がある。来年スタートの新NISA(少額投資非課税制度)で株式投資を始める人には朗報だ。
三菱UFJFGについて、経済ジャーナリストの和島英樹氏は金利上昇で業績の回復が見込めるとした。株式評論家の天海源一郎氏は単元株価格が12万円台と買いやすい点を指摘。2人が注目する銘柄はりそなホールディングスと日本製鉄だった。
阪神タイガースが前回日本一になった85年の翌年、日経平均株価は42・6%上昇した。それから38年が経過し、個人投資家の世代交代も進んでいる。日本株復活へ条件は整った。
(谷道健太/安藤大介・編集部)
週刊エコノミスト2023年12月5・12日合併号掲載
上がる株 金利復活、好業績、訪日旅行 過去最高値へ条件整う日本株=谷道健太/安藤大介