3世代にわたるマイノリティーの闘いを描く前後篇6時間半の大叙事詩 濱田元子
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舞台 東京芸術劇場「インヘリタンス─継承─」
テレビ中継で見ていた2020年米トニー賞の授賞式。「The Inheritance(インヘリタンス)」で最優秀演劇作品賞をラテン系劇作家として初めて受賞した米フロリダ生まれのプエルトリコ系、マシュー・ロペスのスピーチが強く印象に残っている。
ラテン系が米国の人口の19%を占めるにもかかわらず、過去10年でブロードウェーにかかったラテン系作家の作品は約2%だと指摘し、「変革が必要だ。我々の物語をもっと語らせてほしい」と訴えた。コロナ禍でブロードウェーも閉鎖を余儀なくされた。劇場はマイノリティーも含め多様な声を届ける大事な場所であるのだ。
映画にもなったE.M.フォースターの小説『ハワーズ・エンド』に着想を得てロペスが書いた「インヘリタンス」は、2015〜18年のニューヨークを舞台に、3世代にわたるゲイコミュニティーを描く。前後篇で6時間半にわたる大叙事詩だ。1980年代のエイズ流行初期を生きた60代、HIVと共に生きる30代、20代の同性愛者たちが、マイノリティーに対する差別や偏見と闘いながら自分らしさや愛を追求する姿は、社会のあるべき姿を問いかけてくる。
18年に英ロンドンで初演され、22〜23年にはドイツ、ブラジル、デンマーク、カナダなどで上演されてきた。今回は日本初演。上演権獲得を巡るコンセプト・プレゼンを勝ち抜いた熊林弘高が、ロペスから演出を託されたという。
ある一軒の家「ハワーズ・エンド」を巡る価値観の異なる二つの家族の物語が…
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週刊エコノミスト
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