ガザ紛争が米大統領選に飛び火 揺れる民主党の支持基盤 平田智之
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イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃が端緒となったパレスチナ自治区ガザ地区の紛争。パレスチナ側とイスラエル側の対立は、米国にも飛び火している。
米国最大のユダヤ人団体である「名誉毀損(きそん)防止同盟」によれば、事件発生後1カ月間、ユダヤ人に対する嫌がらせ、破壊、暴行などの報告件数は832件と前年同期比で3倍以上となり、うち200件以上が直接今回の紛争に起因しているとされている。
他方、イスラム教徒のための団体「米イスラム関係評議会」によれば、当初2週間のイスラム教徒に対するこうした苦情は前年同期比で3倍の774件に上り、トランプ前大統領が「イスラム教徒入国禁止」を提唱した2015年12月以降最大となっている。イリノイ州ではパレスチナ人の子どもが殺害されるなど痛ましい事件が起きている。
ユダヤ系社会にも「分断」
政治的暴力を記録している米国の非営利調査団体「ACLED」によれば、米国では当初3週間で世界最多となる600件以上の抗議活動(デモ)が起きており、米国の一部の大学では、双方のグループが抗議を行い、キャンパス内の緊張を高めている。
特徴的なのは、760万人(総人口の2.4%)を数えるユダヤ系米国人社会では、おおむねイスラエルへの支持が見られるものの、いくつかのグループが「Not in our name」(ユダヤ人の名前でガザを攻撃するな)と紛争停止を唱えており、同社会において深い分断が見られることである。最近はネタニヤフ政権が採る極右・宗教原理主義的政策に公然と異を唱えるユダヤ系米国人が増えている。
AP通信の11月の調査によれば、民主党支持者の58%がイスラエルの対ハマス政策は行き過ぎと見ており、特に若者の支持がありパレスチナ人に同情的な民主党の急進左派は不満を感じている模様である。ただし、こうした民主党支持層にとっては共和党のレトリックも興味を引くものでない…
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週刊エコノミスト
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