中国政府が地方の「隠れ債務」解消に本腰 対症療法からの脱却なるか 神宮健
地方政府の「隠れ債務」問題に対し、中国政府がリスクの防止・解消に向けて本格的に動き出した。地方債を隠れ債務の返済に充てる仕組みなどをすでに実施しているが対症療法にとどまる。中央と地方の財政関係について、どこまで抜本的な見直しに踏み込めるかが解決のカギを握る。
隠れ債務の要は、地方政府傘下にある投資会社「融資平台」だ。「融資」は中国語で資金調達の意味があり、地方政府は「融資平台」を文字通り資金調達のプラットフォームとして、インフラ建設などの資金調達に利用してきた。
融資平台の債務には地方政府の「暗黙の保証」があるとみなされ債務を拡大させたが、不動産市場の低迷で地方政府財政は悪化しており、財政支援が滞れば債務不履行(デフォルト)の危機が高まる。こうした地方政府の隠れ債務の残高は30兆~50兆元(600兆~1000兆円)に上るとされる。
債務リスクの解消策として実施されているのが「特殊再融資債」の発行だ。地方政府は2018年から、返済期限を迎えた一部の地方債について元本返済のための再融資債を発行していた。20年以降は、融資平台などの隠れ債務の返済も含めた再融資債も発行されるようになった。これが特殊再融資債で、過去3年間、隠れ債務の解消に試験的に利用されてきた。
最近の動きをみると、10月末時点で、25の省・自治区・直轄市などが特殊再融資債を発行し、調達額は累計1兆元(20兆円)を超える。貴州省などの地方債務返済のリスクが高い地域が中心だ。
金融機関の協力を活用したリスクの低減も進められている。中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は、金融機関が地方政府の融資平台と協議し、返済期限の延期や借り換えなどの方法でリスク低減を進めるとともに、新たな隠れ債務の増加を厳格に抑制するとの姿勢を示している。
ただ、これらの対策は融資平台のデフォルトリスクの低減に主眼を置いた対策で、問題の先延ばし…
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週刊エコノミスト
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