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OPECプラスの協調減産 追加見送りで原油相場は低調 芥田知至
サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非OPEC産油国で構成する「OPECプラス」は11月30日、閣僚級会合で今後の原油生産方針を協議した結果、追加の協調減産を見送った。OPECの盟主であるサウジアラビアは、原油需給を引き締めて価格を維持するため、協調減産を強化することを目指したとされる。しかし、閣僚級会合を延期して協議を続けたものの、OPECプラス全体で生産目標を引き下げる追加の協調減産は合意が見送られ、有志国による自主減産が発表されるにとどまった。
結局、2024年1~3月に有志国8カ国で日量約220万バレルの自主減産を行うことが表明されたものの、全体で協調減産をまとめられなかったことや、220万バレルのうち130万バレルはすでにサウジアラビアやロシアが実施していた分で、新たな減産規模が市場の期待に届かなかったことが弱材料とされ、原油価格はWTI原油先物で1バレル=75ドルを下回る水準へと下落に転じた。何とか減産幅を積み増すことには成功したものの、原油相場を押し上げるインパクトはなかった。
ブラジルが参加へ
この会合は当初、11月26日の予定だったが、アフリカの産油諸国との事前協議が難航して延期された。アンゴラやナイジェリアは、それまでメンテナンス不足などから原油生産量の減少が続いており、生産割り当てを減らすことに甘んじていたが、24年の原油生産目標を引き上げることを求めた。OPECプラスによる各国への原油生産目標の提示は、調査会社3社による生産能力についての調査結果に基づき行われるが、この生産目標を巡ってアフリカ産油諸国とOPECプラスとの関係は禍根を残した。
OPECプラスは閣僚級会合後に発表した声明で、24年の生産目標について、ナイジェリアは要望を下回る日量150万バレルを、アンゴラは前回6月会合時の暫定評価を下回る111万バレルを提示した。アンゴラはこの生産目標を不服として、目標にとらわれず生産する構えを公言している。一方で、近年、原油生産を伸ばしているブラジルは、生産量制限の協調には参加しないものの、来年1月からOPECプラスに加わることが発表された。ただ、OPECプラスの結束力や市場への影響力については懐疑的な見方が浮上している。
原油需給の先行きは、OPECプラスが供給を一定程度絞るとしても、不動産不況が続く中国経済の停滞や、米国景気の減速が見込まれることを考慮すると、石油需要は伸び悩んで需給は引き締まらないとみられる。サウジアラビアは減産を強化する可能性もあるが、OPECプラス内で協力を得ることは一層難しくなるだろう。
(芥田知至・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)
週刊エコノミスト2023年12月19日号掲載
FOCUS OPECプラス 追加の協調減産見送り 産油国の足並みに乱れ=芥田知至