週刊エコノミスト Online インフラ政策

デジタル化する高度情報化社会の考え方について 石井泰幸

 

 今日、AI、メタバース、DX(デジタルトランスフォーメーション)など新たなデジタル化の波が押し寄せる中で、企業もまた生き残るため、それに対応した改革が求められている。このようなデジタル化への潮流は第四次産業革命とも呼ばれており、例えばGAFAM(Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoft)をはじめとするプラットフォーム企業が世界的な覇権を握っている。一方で、我が国の企業はこの波に取り残されているとされている。

 しかし、立ち止まって考えてみると、我が国において情報化社会の到来が注目されたのは1970年代であり、我が国の情報化は国家政策として進められてきた。その理由は第二次世界大戦の敗戦からの国際的信用の獲得と、それに伴う国際的競争力を確実なものにするためである。実際、それに先立つ1967年に我が国は企業経営にコンピュータを導入すべく、その先進国であったアメリカに学ぶため、MIS(Management Information System, 経営情報システム)訪米使節団を組織した。MIS訪米使節団には当時の財界を担うトップマネジメントが含まれ、アメリカの情報化に成功した様々な企業、銀行、大学、研究所を訪れ、企業における情報化に関する知識の深化が試みられた。

 しかし、この時点では情報化とは何かという根本的な問題について当時のトップマネジメントは理解していなかった。彼らは、情報ツールを企業に導入すれば、自然と経営強化が実現されると考えていたのである。それゆえ、彼らは経営判断までもコンピュータにゆだねようとした。しかし、ソニーの共同創業者である井深大氏はMIS使節団の一員であったが、コンピュータが経営をハンドリングできることに疑問を呈していた。

 1970年代になると、高度情報化を目指す我が国は、国策として情報化を前進すべく、道路工事と同じように情報化予算を各自治体に配布した。これに伴い、大型・中型のコンピュータが自治体や学校に設置される一方で、民間企業にも高額のコンピュータが導入されることになる。しかし、それは期待されたほどの効果をもたらさなかった。確かに、コンピュータは単純計算においては有用性を発揮したが、それは経営に関する意思決定に関しては無力であったのである。そのため、この時代におけるコンピュータは銀行や官庁等における統計処理やデー…

残り2523文字(全文3523文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

5月14日・21日合併号

ストップ!人口半減16 「自立持続可能」は全国65自治体 個性伸ばす「開成町」「忍野村」■荒木涼子/村田晋一郎19 地方の活路 カギは「多極集住」と高品質観光業 「よそ者・若者・ばか者」を生かせ■冨山和彦20 「人口減」のウソを斬る 地方消失の真因は若年女性の流出■天野馨南子25 労働力不足 203 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事