国際・政治

2024年は選挙イヤー 分断か成長か 中西拓司・編集部

 2024年は米国、ロシアで大統領選が実施されるなど、世界的な「選挙の年」となる(地図参照、拡大はこちら)。選挙結果次第では世界の「分断」が一層進む可能性もあり、世界経済への影響は避けられない。

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米中対立を左右

 最大の注目は米大統領選(11月5日)だ。再選を目指している現職のバイデン米大統領(81)に、野党共和党の候補者として有力視されているトランプ前大統領(77)が臨む展開が想定され、現職のトランプ氏にバイデン氏が臨んだ前回選挙と同じ構図になる可能性がある。一方で、有力な「第三の候補」が浮上する可能性もあり、現時点で選挙戦の展開を先読みするのは難しい。

 対外的には、米大統領選は「今後の米中対立を占うビッグイベント」(今井尚哉・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)と位置付けられるが、長期にわたる選挙戦では「高齢化」もキーワードになりそうだ。バイデン氏は23年11月に81歳になり現役大統領として最高齢記録を更新したが、健康不安説もくすぶる。仮に当選して2期目を務め、任期満了を迎えれば86歳だ。

 トランプ氏も日本でいえばすでに後期高齢者だ。もし24年の大統領選で当選すれば、25年1月の大統領就任式時点では78歳7カ月で、バイデン氏が21年に就任した時点の年齢をわずかに上回る。こうした構図に、Z世代といった若者世代がどんな投票行動をとるかも注目される。

 米中対立の最前線で、先端半導体の一大供給源にもなっている台湾も総統選(1月13日)を迎える。選挙戦は、与党・民進党の頼清徳(らいせいとく)副総統、最大野党・国民党の侯友宜(こうゆうぎ)新北市長、第3政党・台湾民衆党の柯文哲(かぶんてつ)前台北市長による三つどもえの構図だ。台湾統一への意欲を隠さない中国の習近平国家主席に対し、蔡英文総統は「台湾は台湾人のもの」として距離をとり、日本、米国との関係を強化してきた。現政権の路線が継承されるかが焦点になる。

 韓国も総選挙(4月10日)がある。尹錫悦(ユンソンニョル)政権に対する中間評価で、勝敗は政権基盤に大きな影響を与える。尹氏を支える保守系の少数与党「国民の力」にとっては、政権の安定には過半数の議席獲得が必須となっている。

新興国は混乱?

 インドやロシアなど新興5カ国(BRICS)や、新興・途上国などの「グローバルサウス」とされる国々も正念場の年となる。

 ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領(71)は23年12月、任期満了に伴う大統領選(3月17日)に立候補する意向を表明した。プーチン氏の支持率は依然高く、5選が確実視される。当選すれば任期は30年までとなる。

 インドも24年4、5月に総選挙を迎える。モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)は、23年12月に投開票されたインド4州の議会選挙で野党を破って単独過半数を確保した。この選挙は総選挙の前哨戦と位置付けられており、3期目を目指すモディ首相にとっては幸先のいい出発となった。

 BRICSは1月、6カ国が加盟して11カ国に拡大する見通し。ただ、6カ国の一つのアルゼンチンでは23年11月の大統領選で極右政権が発足。新たに就任した外相が「我々はBRICSに加わらない」との意向を示しており、BRICSの拡大路線に暗雲が漂う。

 新興国の事情に詳しい大和総研の増川智咲シニアエコノミストは、ロシアやインドのほか、同じく選挙を抱えるインドネシア、メキシコの新興4カ国は選挙後も現政権の枠組みが維持され、政治経済や外交政策の大規模な転換につながる可能性は低いとみる。

 その一方で、同じく選挙があるBRICSの一つ、南アフリカのほか、ウクライナ侵攻で外貨不足に陥ったため国際通貨基金(IMF)に融資を申請したパキスタン、スリランカ、バングラデシュについては、経済構造にもともと脆弱(ぜいじゃく)性を抱えており「選挙がさらなる混乱をもたらすリスクがある」とみている。「これらの新興・途上国にとって24年の選挙は、安定か一時的な混乱かの分かれ道になるかもしれない」と指摘する。

(中西拓司〈なかにし・たくじ〉編集部)


週刊エコノミスト2023年12月26日・2024年1月2日合併号掲載

2024世界経済総予測 「選挙イヤー」分断か成長か 米は高齢対決、露はプーチン当確=中西拓司

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