中・高緯度の火山噴火でも起きる寒冷化/169
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インドネシア・西スマトラ州のマラピ火山(標高2890メートル)が12月3日、噴火した。噴煙は高度1万5000メートルに到達し、周辺地域に火山灰が降り注いだ。マラピ火山は環太平洋火山帯に位置するインドネシアに127ある活火山の一つで、これまでも噴火を繰り返している。
世界ではこの2年ほど、大噴火が立て続けに観測されている。2022年3月にはマナム火山(パプアニューギニア)、5月にベズイミアニ火山(ロシア)、12月にスメル火山(インドネシア)、23年に入っても4月のシベルチ火山(ロシア)、11月のウラウン火山(パプアニューギニア)がそれぞれ噴火している。
また、アイスランドの首都レイキャビクに近い南西部の港町グリンダビークでは現在、地下からマグマが上昇して噴火が懸念されている(本連載の第168回を参照)。こうした活動は地域に大きな火山災害をもたらすだけでなく、地球全体の気候に影響を及ぼすことがある。
1783年にはアイスランド中央部のラカギガル火山が大噴火し、その後の数年にわたり世界規模で低温と多雨の異常気象が発生した。ヨーロッパでは平均気温が約1度下がった結果、広い地域で食糧不足となり、遠く離れた日本でも100万人といわれる餓死者を出す「天明大飢饉(ききん)」が発生した。
従来、噴火による寒冷化は主に低緯度地方の火山が噴火した場合に起こると考えられていた。赤道近くでは「貿易風」と呼ばれる東向きの強いジェットストリームが流れており、これに細粒の火山灰や「硫酸エアロゾル」が運ばれて太陽の光を遮る。マグマに含まれている硫黄は、大気中で硫酸などのエアロゾル(微細粒子を含む気体)を形成し、太陽光を反射するため地球表面が冷却される。
英大学の研究成果
過去を振り返ると、1815年のインドネシア・タンボラ火山の噴火や、1991年のフィリピン・ピナツボ火山の噴火ではこうした寒冷化が起きた。低…
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週刊エコノミスト
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