中国の高所得国入りは射程圏内 14億人の「未富先老」回避なるか 岸田英明
2024年が明けた。中国は「ゼロコロナ政策」解除から丸1年となる。24年の中国経済は、住宅市場の不振や、コロナ禍で高まった家計の貯蓄志向の高止まりで、消費の回復が想定外に弱かった。一方、新エネルギー車や再生可能エネルギーなど好調なセクターが支え、政府の実質国内総生産(GDP)における成長率目標「5%前後」は達成されたもようだ。
共産党指導部は23年12月中旬、24年の経済運営方針を協議する中央経済工作会議を開催。「(経済の)見通しと(足元の)成長と雇用の安定化に有利な政策を増やす」方針の下、「科学技術イノベーションに現代化産業システム建設をけん引させる」「国内需要拡大に注力する」など九つの重点任務を示した。成長率目標は未発表だが、4~5%台に設定される見通しだ。外部機関では、国際通貨基金(IMF)が4.6%という予測を11月に示した。ちなみにこの数字について、海外報道では「23年比で減速」とする見出しも見られたが、中国報道はIMFが予測を上方修正したことを強調して報じた。
注目点多い24年の中国経済だが、所得と出生数に着目すると転換点が浮かび上がる。
まず所得について、中国は24年にも高所得国入りをうかがう位置にいる。世界銀行の最新の基準では1人当たり国民総所得(GNI)が1万3846ドル以上の国・地域が高所得国に分類される。22年の中国は1万2608ドルだった。
婚姻数10年ぶり増加
成長率から単純に5%増で計算すれば、23年のGNIは1万3238ドルとなるが、23年は為替(11月末までの平均レート)が5%近くドル高・元安に振れたため、実際には1万3000ドルに届かない可能性が高い。24年は米国の利下げによる若干の元高への揺り戻しが想定される。世銀の基準改定があるものの、中国が5%近くの成長率を達成する前提で、元高の振れ幅次第では、高所得国入りの可能性もある。国内格差の問…
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週刊エコノミスト
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