国際・政治東奔政走

再開した皇室制度巡る議論 愛子さま皇族残留に道開けるか 野口武則

自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」で発言する座長の麻生太郎副総裁(中央)。保守派の山谷えり子、有村治子、衛藤晟一の3氏(右端から)もメンバーに入った(2023年11月17日)
自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」で発言する座長の麻生太郎副総裁(中央)。保守派の山谷えり子、有村治子、衛藤晟一の3氏(右端から)もメンバーに入った(2023年11月17日)

 2024年は皇室にとって節目の年となる。秋篠宮さま(58)の長男悠仁さま(17)が9月に成年を迎えられ、天皇陛下(63)の長女愛子さま(22)は春に大学を卒業される。

 陛下の次の世代で皇位継承資格を持つ男系男子は、悠仁さましかいない。現行制度では、女性皇族は一般男性と結婚すると皇族を離れることになる。安定的な皇位継承に向け、政治の取り組みが待ったなしだ。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点などの疑惑を抱えた細田博之氏が衆院議長を退くのを待ったかのように、自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」(会長・麻生太郎副総裁)が昨秋から議論を始めた。

 麻生氏の実妹は、三笠宮家の故寛仁さまの妻信子さま。22年1月の歌会始の儀で、以下の歌を詠んでいる。

「成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ」

 愛子さまの今後に期待を示した内容だ。自民の動きを受け、停滞していた国会での議論が再開しそうな気配がある。

容認に転じた保守派

 政府の有識者会議が21年12月にまとめた報告書は、当面の皇族数を維持する策として、①女性皇族が結婚後も皇族に残る、②旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする──の2案を軸とする。

 自民が今年前半にもまとめる提言は、これに沿った内容になる見通しだ。皇室典範改正などで①が実現すれば、愛子さまらが将来も皇室に残る道がようやく開ける。

 平成以降の皇室制度を巡る議論は、女性にも皇位継承資格を認めるかどうかが焦点だった。愛子さまが誕生した01年、今の陛下より若い世代に男子がおらず、喫緊の課題とされた。

 しかし、小泉純一郎政権が05年に女性・女系天皇を容認する有識者会議の報告書をまとめたのを最後に、20年近く進展がない。悠仁さまが誕生したものの、皇族数は先細る一方だ。

 男系継承の維持を主張する自民党保守派が強硬に抵抗し、待ったを掛けてきた。進展すれば歴史的な転機である。

女性天皇またも棚上げ

 なぜ保守派は容認に転じたのか。自民を支持する有力保守系団体の関係者は明かす。

「①は、女性皇族が皇室に残っても皇位継承資格がない。夫や子どもは皇族にすらならない。結婚後も皇族の肩書で公務をしていただくというだけで、幕末に皇族の身分を残したまま徳川14代将軍に嫁いだ皇女和宮と同じです」

 本質的な安定的皇位継承の問題を先送りし、女性・女系天皇につながる議論をまたも棚上げした点を評価しているというのだ。

 ①をのむことで議論を進めつつ、②を実現することに真の狙いがある。敗戦から間もない1947年に皇籍から離れた伏見宮など旧11宮家の血を引く男系男子を、皇族に復帰させる案である…

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週刊エコノミスト

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