「ポスト岸田」は石破氏有力? 裏金捜査に戦々恐々の自民党 与良正男
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ここまで追い詰められた状況の中で新しい年を迎えるとは、岸田文雄首相もついしばらく前までは考えていなかったに違いない。
自民党の派閥が開いた政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑は、東京地検特捜部が政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で強制捜査に乗り出し、1988年に発覚したリクルート事件に匹敵する政治事件に発展した。
能登半島地震への対応のため1月4日、伊勢神宮参拝を延期し、首相官邸で記者会見した岸田氏は、秋の自民党総裁選に出馬するかどうか、明言は避けたものの、「政治への信頼回復こそ最優先」と語り、党改革への意欲を示した。
ただ、実際には「今春、新年度予算案の成立を機に退陣するのではないか」「今春の米国訪問を花道に辞めるのでは」といった声が自民党内でも強まるばかりだ。
にもかかわらず、党内では「岸田降ろし」の動きは出ていない。体制一新を求める声が上がらないのは、逆に党全体が八方ふさがりとなっていることを如実に表しているといっていい。
不支持率79%の衝撃
世論はますます厳しい。
毎日新聞が2023年12月16~17日に実施した全国世論調査では、岸田内閣の支持率は、11月調査から5ポイント下落して16%。「危険水域」とされる20%を割り込んだ。
低支持率以上に注目すべきは、「支持しない」と答えた不支持率が79%に上ったことだ。これは森喜朗内閣末期(01年2月)の75%を上回り、毎日新聞が内閣支持率の調査を始めた1947年以降、最も高い数字である。
この調査では自民党の支持率も前月比7ポイントも下落して17%に急落した。こちらは自民党が旧民主党から政権を奪い返して以来、最低の数字だ。
対する野党第1党の立憲民主党の支持率は5ポイント上がって14%となった。これまで自民党には「内閣支持率が下がっても党の支持率は安定しており、立憲も低迷したままだから選挙には影響しない」という安心感があった。
しかし、それも変わり始めている。自民党は「いざとなれば首相が交代すればいい」では済まなくなっているということだ。
実は後継選びの難しさは、ここにある。誰が首相になっても、この難局を乗り切るのは難しい、と所属議員も考えているからだ。
そんな中で、「ポスト岸田」候補を挙げるとすれば、やはり一番手は、「次の首相は誰がふさわしいか」を尋ねる世論調査で、再び上位を占め始めた石破茂元幹事長だろう。
石破氏が率いるグループは結成当初の20人から減り続け、現在は「派閥」と認知されていない。だが、派閥の悪弊が批判される今は、逆にこれが強みとなる。
キーパーソンは、菅義偉前首相である。
岸田氏が勝利…
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週刊エコノミスト
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