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国際・政治 FOCUS

COP「脱化石燃料」で歴史的合意 産油国開催で異例決着 高村ゆかり

「脱化石燃料」を盛り込んだ合意文書を採択し、拍手するジャベル議長(中央)=ドバイで2023年12月13日、COP事務局提供
「脱化石燃料」を盛り込んだ合意文書を採択し、拍手するジャベル議長(中央)=ドバイで2023年12月13日、COP事務局提供

 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が、アラブ首長国連邦(UAE)の中心都市ドバイで2023年11月30日~12月13日に開かれ、筆者も現地で参加した。「化石燃料からの脱却」という対策の方向性が初めて合意文書に明記され、温室効果ガスの削減に向けた重要な足がかりとなる合意がなされた。「脱化石燃料」の実現に向け、各国がどのような目標を作成し、具体策を示すかがこれから焦点になる。

 気候変動対策の国際的な要であるパリ協定(15年採択)の下、各国は5年ごとに、削減努力を積み増した目標を改めて提出することが義務づけられている。各国は25年までに、原則35年の削減目標を国連に提出する。今回は、各国の取り組みを加速・強化させる明確な方針を合意文書に盛り込むことができるかどうかが問われた。

 合意文書は、できるだけ気候変動の影響・リスクを抑えるため、産業革命前からの気温上昇を1.5度までに抑える目標を再確認した。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書を参照し、1.5度目標の達成には、19年比で世界の温室効果ガスを30年に43%削減、35年に60%削減という削減水準が求められることを記した。各国が強化・加速する対策として、30年までに再生可能エネルギーの設備容量を3倍、エネルギー効率の年改善率を2倍にする方向性も示した。

企業にも影響

 化石燃料を段階的に削減・廃止する方針についても議論され、「50年排出実質ゼロを達成するようエネルギーシステムの脱化石燃料化を行う(transition away from fossil fuels)、この10年でそれを加速する」との文言で合意した。「phase out(段階的廃止)」という表現こそ使わなかったものの、50年排出実質ゼロという最終ゴールを示し、「脱化石燃料」の目標を掲げた。

 30年にわたるCOPの歴史で、こうした文言が合意文書に明記されたのは初めてだ。対象はエネルギーに使う化石燃料に限定されるなど抜け穴はあるものの、歴史的合意であることは間違いない。産油国が議長を務めるCOP28で合意されたことは驚きだが、逆に議長が産油国だったからこその結果かもしれない。合意が歴史的転換点になるかは、各国が25年までに効果的な目標を出すことができるかにかかっている。

 合意を受け、各国では25年までに提出する新たな削減目標の策定作業が動き出す。日本の場合、次のエネルギー基本計画の検討にも当然関わってくる。24年の国内政策の大きな注目点になる。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の気候変動関連開示基準では企業に対し、気候変動に関する最新の国際合意やそれに基づく国の目標に照らし、どのように企業目標を立てたのか開示するよう求めている。今回の合意は企業活動にもインパクトをもたらすだろう。

(高村ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授)


週刊エコノミスト2024年1月9・16日合併号掲載

FOCUS 気候変動対策 COPが「脱化石」合意 産油国開催で異例決着=高村ゆかり

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