欧米のマネー収縮は兆し? 世界不況に備えよ 愛宕伸康
新型コロナ対策で膨張した欧米のマネーが収縮している。米国のマネーストックを見ると、新型コロナによるパンデミックに陥った2020年3月直後から垂直に見えるほど増加し、それが22年末から減少に転じている(図1)。
マネーストックが減少するのは、米連邦準備制度理事会(FRB)のホームページでデータがダウンロードできる1960年以降で初めてのことだ。筆者の目には尋常ならざる絵に映る。
経済とマネーはコインの表と裏。金融部門から供給される通貨の総量であるマネーストックと、経済活動を示す国内総生産(名目GDP)との間には、統計的に安定した関係がある。つまり、マネーストックの変調は経済活動の変調を示唆している。
FRBが5%を超える利上げを行ったにもかかわらず、景気堅調をはやして高値を維持する米株価を見ていると、100年前の「大正バブル」を連想させる。第一次世界大戦とスペイン風邪により、今と似たような環境の下で発生した大正バブルを、第9、11代日本銀行総裁の井上準之助は「空景気」と呼び、その背景としてマネーの膨張を指摘した。
ユーロ圏でもマネーストックがユーロ発足以降初めて減少している(図2)。多くの市場エコノミストが23年10~12月期実質GDPのマイナス成長を予測するのは偶然ではない。そうなればユーロ圏は2四半期連続マイナス成長の“テクニカル・リセッション”になる。利上げをすでに停止した欧…
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週刊エコノミスト
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