和田肇/浜田健太郎
編集部から
5年前に山形在住の祖母が亡くなった。102歳だった。私は小学校に入学した時、母から「山形のおばあちゃんに手紙を書きなさい」としつこく言われ、半ば強制的に手紙を書かされたことがある。手紙を見た祖母は「大したもんだ」と喜ぶことしきりだったという。後に聞いた話だが、祖母は読み書きができなかった。山奥の貧しい農家に生まれた祖母は、幼い頃から妹たちの面倒を見たり、親の農作業を手伝ったりしていたので、ほとんど学校に行けなかったのだという。当時の尋常小学校側もそうした事情をくんで、「修了(卒業)」扱いにしてくれたらしい。
2024年が始まった。今年もおそらく、良い事より、良くない事の方が多く起こるだろう。だが、私たちは読む能力と書く能力という、途方もなく高度なスキルを身に付けている。困難は乗り越えられると思う。
(和田肇)
本誌2023年11月21・28日合併号で特集「絶望のガザ」の編集を担当した。インタビューした岡真理さん(京都大学名誉教授)は、「こんな時こそ、文学の言葉が必要だ」と話した。極限まで想像力を動員して、不条理にあらがう声に耳をそばだて、言葉を紡ぎ出すことが求められているということだろうか。
パレスチナにおける大規模な戦闘はすでに3カ月に及ぶ。イエス・キリストが生まれたかの地で、想像を絶する惨禍が続く。対照的に、遠く離れた日本の都会はイエスの生誕を祝うクリスマスに華やぐ。同じ人間として、同時代を生きる者として、あまりの隔絶ぶりに言葉を失う。
ジャーナリズムは要約を好む。「どっちもどっち」「暴力の連鎖」。決まり文句は勉強不足に由来する。昨年10月以前にパレスチナで戦闘が起きる度に、私自身が心の中で発していた声だ。
(浜田健太郎)
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