週刊エコノミスト Online編集後記

北條一浩/桐山友一

編集部から

 2023年11月29日、脚本家で作家の山田太一さんが亡くなった。「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」をはじめ、ホームドラマに新たな視点を導入した人である。

 従来のテレビドラマは、傑出した主人公が葛藤を通じて困難を克服する筋立てが多く、予定調和的な空気があった。山田作品はきっぱりそこと縁を切り、特徴もなさそうな地味な人々や劣等生を好んで取り上げた。

「男たちの旅路」に、車椅子の人々の困難を描いた「車輪の一歩」という作品がある。ここで主人公(鶴田浩二)が車椅子の青年に「迷惑を掛けてもいいんじゃないか」と言い、「いや、掛けなければいけないんじゃないか」と踏み込むシーンがある。

「迷惑をかけなければいけない」。なんとオリジナルなせりふか。自己責任論が幅を利かせ、弱者と強者の格差が広がる今、このせりふが広げる波紋は小さくないはずだ。

(北條一浩)

 50歳を目前にして老眼になった。1年ほど前から、細かい字の読みにくさを感じてはいた。ある時、まさか、と思ってスーパーの売り場にあった老眼鏡をかけてみると、これがまたよく読める。いさぎよく老眼を受け入れた。

 しかし、もう一つ深刻な問題がある。老眼で読書量が落ちたのに、本を買う量は変わらないことだ。もともと読む量より買う量のほうが多いのに、「積読」本の増殖ペースが加速した。広くもない賃貸マンションに、名前だけ知っている作家の文庫本、聞きかじった専門書、テーマが旬を過ぎた新書など、たぶん1000冊はある。

 本棚に入りきらない本を部屋の隅に重ねておくと、いつの間にか植物のように高さが成長する。上に伸びきると横にも広がってくるからやっかいだ。少しでも積読本を減らそうと目を凝らして読んでいたら、視界がぼやけて寝落ちした。

(桐山友一)

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