週刊エコノミスト Online編集後記

稲留正英/荒木涼子

編集部から

 ある会合で、中国事情に詳しい金融関係者に会った。その人物によると、台湾の富裕層マネーの日本流入が加速しているという。理由の一つは円安だが、より、彼らを駆り立てているのが、「チャイナ・リスク」だ。

 富裕層は、何も中国が軍事侵攻すると考えているわけではない。むしろ、選挙などの合法的な手段を経て、中国の支配力が高まる可能性を憂いている。その結末として、彼らが予想するのが「台湾の香港化」だ。

 本土では習近平氏の腐敗防止運動による締め付けが一段と厳しくなり、党幹部はワインを飲む写真でさえ、撮られるのを恐れるようになっているという。失脚したアリババ創業者のジャック・マー氏は他山の石だ。そうした懸念が、台湾マネーを日本のタワマン、高級リゾートに向かわせる。地政学リスクは日本にとり、意外なチャンスかもしれない。

(稲留正英)

 気候変動対策を話し合う国連の会議(COP28)に合わせ、米国が「2050年までに世界の原発の設備容量を3倍に」と宣言するなど、エネルギー危機や温暖化を理由にした原発回帰の議論が加速している。

 私は23年夏の育休中、日本原子力学会のシンポジウムに参加した。テーマは「福島第1の最終形」。政府の廃炉工程表には明記されていない「廃炉完了時の姿」を話し合った。

 同じくパネリストだった学生の言葉が忘れられない。「これから生まれる子どもは、福島第1の電力を使ったこともなく、恩恵を全く受けていないのに、廃炉に関わらないといけない」

 学会は、最終形として望む姿によっては廃炉作業を100年単位で考える必要があると指摘する。6月に生まれた我が子やその子は、22世紀を生きるだろう。その時、福島第1はどのような姿だろう。人類は原発を使っているだろうか。

(荒木涼子)

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